本当に大丈夫なのでしょうか?    

 環境ホルモン( 内分泌かく乱物質)の一部が、脳神経の発達に影響を与える恐れがあるという研究結果について、8月26日の新聞が報道しています。

PCBやダイオキシンを含む食事の摂取と、神経系の発育異常や多動症の関連性などについての懸念は従来からもたれていたのですが、因果関係を示す直接的な証拠があったわけではありません。

今回の発表内容は産業技術総合研究所と国立環境研究所の研究グループによりはじめて確かめられたものです。

マウスの脳にプラスチックの可塑剤であるフタル酸エステル類や樹脂類のビスフェノールAなどを注入し、自発運動に重要な役割を果たす脳内の「ドーパミン」の変動を調べたものですが、ドーパミン神経の発達が阻害されていることが分かったそうです。

ドーパミンというのは、アドレナリン、ノルアドレナリンやセロトニンとともに神経伝達物質の一つで、その異常は多動や攻撃性・衝動性などの行動異常に関係すると考えられています。

最近は、ちょっとしたことでキレたり、普段はおとなしい子が突然、異常行動に走るという事件が後をたたず、普通の子の犯罪が社会的問題になっています。

また、大人に限らず子どものうつ病の報告も増えつつあり、物事に集中できないで動き回る「注意欠陥多動性障害(ADHD)」や、話す、読む、書くといった基本的能力に困難さを残す学習障害(LD)などが疑われる児童も目立つようになってきました。

ストレス社会といわれるように仕事や塾通いに追い回され、時の経つテンポが早くてあわただしい毎日、学校や会社のみならず家庭においても人間関係に悩みを抱えるといった人が少なくありません。

このような日常、社会環境、複雑な人間関係などが相からみあって人の心をむしばんでいるのでしょうが、これらの訴えが高度経済成長期以降に急に増えてきたのは偶然なのか、果たしてそれだけの理由によるものかという点に疑問が残ります。

生産量を上げるために使用されてきた大量の農薬、牛、豚や養殖魚の発育を補う各種の抗生物質をはじめとする薬剤、日常口にすることの多い各種食品添加物、陶磁器に代わって食器に繁用されるようになったプラスチック、これらはこの2030年間にその使用量が急速に増えたものです。

ドーパミン神経の発達障害がADHDの原因になっているのではないかと言う危惧は以前からあったことですが、今回の研究はこれを裏付ける契機となる重要な意味をもっているとも言えます。

平成14年の7月に東京で開催された科学技術振興事業団のシンポジウムでは、PCBの甲状腺ホルモンへの影響やビスフェノールAの脳神経への影響などの基礎研究が発表されましたが、脳の発達への影響は胎児や幼児の特定の時期(臨界期)だけに作用する性格のものですから、動物実験で実証するのも困難という壁がたちはだかっています。

今回の結果はマウスという動物で得られた成績にしかすぎず、それが人にも当てはまるとは限りませんが、環境汚染物質と子どもの行動異常の関係についてのナゾを解きほぐす鍵になるかも知れず、今後の研究成果を期待することにしましょう。


戻る