事故に対する責任の取り方

子供の加害行為、親の監督責任は?

2015.4.14


 11歳の児童が蹴ったサッカーボールが校庭を飛び越えたために起きたバイクの転倒事故をめぐり、親が賠償責任を負うべきかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は「通常は危険でない行為でたまたま人を死傷させた場合、親は賠償責任を負わない」と、監督義務を怠ったとして賠償を命じた一、二審判決を破棄し、遺族側の逆転敗訴が確定したのです。(4月11日、各紙)

事件は、放課後、解放された校庭でゴールに向けフリーキックの練習をしていたところ、ボールがゴールの後方10bにある低い門扉を越えて外側の道路に転がり出たために起きたもので、当の80代男性は足を骨折、その後、不幸にも死亡されたというものです。

テレビなどでも放映されましたが、けげんに感じるのは、ゴールの設置位置や、その後方の門扉やフェンスが低く(高さ1.3b)、蹴ったボールが校庭外に飛び出すのは明白だと思われるのに、シュート練習を認めていた小学校の施設管理義務が余り問題にされている様子がないことです。

民法は、子供が第三者に損害を与えた場合、「親が監督義務を怠っていれば賠償責任を負う」と定めているそうですが、従来は「監督責任」の範囲が不明確で、同様のケースでは親が賠償責任を負うことがほとんどであったということです。今回の例では、子供がボールを故意に道路に蹴りだしたわけでもなく、通常のしつけもなされており、親の目の届かない状況での事故なので予測まで求めるのは酷とも言えるでしょう。

 今回の判決は、親の監督責任が免除される基準を初めて示したもので、今後は子供の加害行為の性質、危険性が事案ごとに判断されることになるとの見解が示されています。

 いずれにしろ、まずまず妥当な判断ではないかと思われますが、余りに杓子定規に親の監督責任を追及すると子供は外で遊べなくなり、そうでなくとも運動不足が取りざたされている現状を追認することになりかねないでしょう。

 親の監督責任やしつけということになれば、子供が引き起こした自転車事故の方が問題は大きいのではないかと思います。

交通事故は年々減少しているのに、自転車が関係する事故はそれほど減っておらず、加害者責任を問われ、高額の賠償を命じられる判決が相次いでいます。

小学生が乗った自転車と歩行者の女性が衝突した事故では、少年の前方不注意が原因として母親に約9500万円の損害賠償が出された(神戸地裁、25年7月)のをはじめ、交差点で他の自転車と出合い頭に衝突した事例では、12歳の少年の責任能力を認めた上で、安全教育を徹底していなかった両親の監督義務違反が問われて約540万円の賠償金支払いが命じられるという判例もあり、自転車に乗るマナーやしつけを徹底して親の監督義務を果たしておくことが何よりも大切ではないでしょうか。

神戸地裁が、自転車で女性をはねて重い障害を負わせた子供の親に高額賠償命令を出して以降、自転車保険を取り扱っている保険会社には問い合わせや加入者が急増しているということです。また、兵庫県は昨年10月、自転車の使用者らに自転車保険への加入を義務付ける新条例を制定する方針を全国で初めて明らかにしました。

 親の監督責任とは違う話ですが、野球観戦中の事故についての報道も話題になっています。

 札幌ドームでのプロ野球観戦中に、ライナー性のファウルボールの直撃で右目を失明したという30代女性の損害賠償訴訟に関することです。

札幌ドームでは年間約100件の打球による事故が発生しているそうですが、札幌地裁は女性の訴えを全面的に認め、「球場の設備は安全性を欠いていた」として、北海道ファイターズ球団側に約4200万円の支払いを命じたという判決結果を、4月13日付の毎日新聞が評論しています

 各球場とも集客を目的に臨場感を高める施設工夫を凝らしており、札幌ドームも2006年に内野席フェンス上の防球ネットを取り外すという施設の変更をしていたため、裁判は施設の管理責任を指摘したというのです。

 仙台の球場で起きた同様の事例では、安全性の不備を認めず原告敗訴の判決だったようですが、全く正反対の判決が下された今回の事故では、球界全体に及ぼす影響も考慮して球団側は控訴に踏み切ったということです。

 被害に遭われた女性は誠に気の毒この上ないことですが、野球好きの人々の中にはこの判決に多少の違和感を覚える人も少なくないでしょう。

筆者も近くの甲子園球場に観戦に出かけるたびに、もしファウルボールの直撃を受けでもしたらと想像することがしばしばです。記事は、子供や高齢者は短時間で適切な回避行動をとることは容易ではないとして、安全対策の見直しにも言及していますが、多くのファンがネットを張り巡らすことに異論を唱えることは目に見えているようにも思われます。

解決策は簡単には見つかりそうもありません。防御ネットで囲まれた高齢者、子供、女性専用のコーナーを用意するとか、大人の男性が必ず同伴して打撃の瞬間は打球から絶対目を離さないようにするとかの打開策しかないのでしょうが、事故が起こる確率をゼロにすることは不可能でしょうから、球団や球場側が重大事故に備えた保険に加入することが必須ではないでしょうか。