パンドラの箱が開けられ 世界危機が? 

 英国 EUから離脱  移民問題の複雑さ

2016.6.28

 英国が国民選挙でEU(欧州連合)からの離脱を選択したことによって、世界経済の先行きに不透明感が拡大しています。

市場の混乱によって失われた世界株式の時価総額は3兆j(306兆円)とも推定され、英国のGDP(国内総生産)2018年までに1〜2%は下押しされるであろうと見られています。

 昨年12月、ブリュッセルで開催されたEU首脳会議では、中東や北アフリカの「難民・移民流入問題」や、英国がEUに求める「移民規制」を盛り込んだ「EU改革案」についても協議され、加盟国からはこの英国案に強い難色が表明され、双方の歩み寄りが焦点となっていたのです。

英国内でEU懐疑論」が強まり、離脱をめぐって国内世論が拮抗した末に離脱が選択された背景には、「移民」に対する反発と、EUによって決められた法律や規制に大英帝国が従わざるを得ずプライドが傷つけられたからと解説されています。

 EUの基本条約では域内の移動の自由が保障されており、東欧など10ヶ国が04年に一斉にEUに加盟してからは、所得の低い東欧諸国からより良い仕事や生活を求めて移民が英国に押し寄せました。

その結果、移民の数は10年間で約100万人に達し、これが英国人から雇用を奪い、医療、教育、住宅といった公共サービスを圧迫しているとして移民への反発が増幅したようです。

 わが国にとって遠い欧州の出来事と済ますわけにはいかず、市場の混乱によって急速に円高が進行、23日の日経平均株価は一時1300円超も急落しました。

 株なんて自分には関係ないよと涼しい顔をしている人でも、株はクセモノ、株価下落が年金や生保の財源に深く関わってくると聞かされれば心穏やかではなくなるのではないでしょうか。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:年金保険料を一括して運用する資産額140兆円の世界最大の機関投資家)は、平成2610月に保有資産の投資比率の見直しを図り、国内株式、外国株式の割合をいずれもそれまでの12%から25%へと倍増し、比較的安全な運用先である国債などの国内債券を60%から35%に引き下げると発表。この措置により10兆円超の資金が株式市場に流入することになり、政府が株価を操作する「官製相場」(株価維持操作:PKO)との批判があるとはいえ、相場の下支え効果や手堅さ転じての「高収益」になるという期待感が先行する羽目になりました。

 損得の荒波があるとはいっても、13年4月の市場運用開始から2712月までの累積収益額は50兆円超の黒字となっていて、株価の変動に翻弄されて現役世代の支給額が減額される可能性はほぼないということですから先ずは一安心。

このように利回りアップといえば話は簡単なのですが、株式市場の変動に収益が左右される構図が強まったことは否定できず、今回のような世界経済の危機に直面するなどで運用環境が悪化すれば、将来世代の年金支給額の減額も現実味を帯びてくるのは避けられないかも知れません。

昨年だけで110万人の難民が流入したドイツでも、反難民を訴える民族主義政党が躍進して政権を揺るがしています。イスラム教への偏見が強いその他のEU諸国ならなおさら、移民排除の動きの広がりから反EU政党の台頭を招き、EU離脱を目論む国がドミノ現象のようになだれを打って後を追い、遂にはEU崩壊につながりかねない事態を危惧する声も少なくないようです。

難民・移民問題は微妙で複雑な課題をかかえています。

昨年のパリ同時テロの発生後の1116日、EUは初の外相会議を開き「難民・移民問題とテロ脅威の問題を混同することがあってはならない」と訴え、テロ事件を契機にEU内で難民受け入れ策の見直し論が高まる空気をけん制しました。

テロ実行犯のひとりが難民としてギリシャに入国していた事実から、難民・移民に対する警戒心がふくらみ、米国でもパリ・テロ事件を契機に24州がシリア難民の受け入れ方針に反対する声を上げました。

われわれ日本人にとって、移民・難民問題は他人ごとではありません。

シリア難民などの受け入れに関してもわが国は慎重な姿勢を崩さず、日本は難民に冷淡だという批判を浴びて来たのです。

少子化などで人口減少はますます深刻さを増しており、労働力不足からもっと外国人を受け入れざるを得ない局面はそう遠い話ではなくなってきています。

江戸時代の鎖国や島国という地勢的な影響、ほとんどの人が外国人と付き合う機会も余りなかったという実態などから、難民や移民の受け入れに否定的な意見も少なくないようです。過去に決別して違う文化や習慣、思考などになじみ理解し受け入れる心構えと、そのためには何が必要かという議論を普遍化する努力が求められるように思われます。

英国のEU離脱を他山の石として、移民や外国人の受け入れには何が必要かを考え直す良い機会なのかもしれません。