ノーベル医学・生理学賞 「体内時計」研究者に

2017.10.10


 2017年のノーベル医学・生理学賞は、生物の体内時計の仕組みを発見した米ブランダイス大のジェフリー・ホール名誉教授ら米国人3人に授与されると、スウェーデン大のカロリンスカ研究所が発表しました。

毎年ノミネートされてきた免疫学の大家、わが本庶祐博士は本年も選から漏れる結果となりました。今年こそはという期待も大きかっただけに残念なことですが、明年を期することにしましょう。

 人間のみならずほとんどの生物は、睡眠や血圧、ホルモン分泌などを24時間周期のリズムで調節している「体内時計」(生物時計とも)を備えています。

朝が来ると目が覚め、夜暗くなると自然に眠くなるとか、海外旅行で時差ボケが起こるのも体内時計の働きによるものなのです。夜行性・昼行性といった動物の行動パターンの差も体内時計で制御されており、動物の時間的住み分けや行動の時間配分など、動物の生存に不可欠な時間測定機構の本態なのです。

 哺乳類の体内時計の司令塔は脳の「視交叉上核」(親時計)という部位にあり、全ての臓器にも体内時計(子時計)が備わっていて、脳の体内時計からの指令で生体リズムを刻むという仕組みになっています。

 概日リズム(サーカディアンリズム)とは、殆どの生命が地球の自転に同調して約24時間周期で変動する生理現象のことで、最初に見つかったショウジョウバエの遺伝子が生命の謎に迫る重要なカギになったとされています。

受賞したホール氏らはキイロショウジョウバエを使った実験で、日常の体内リズムを制御する時計遺伝子「ピリオド」を特定(1984)。体内時計を制御する遺伝子や、概日リズムに応じて変動するたんぱく質の昼夜の差を明らかにしたことにより、「体内時計を制御する分子メカニズムの発見」が授賞理由とされたのです。   

1970年代にショウジョウバエを用いてX染色体の一部に概日リズムに関わる遺伝子が存在することを発見したカリフォルニア大のベンザ―とコノプカ両博士の業績を、更に発展させ今回の偉業に導いたのがホールら3人で、生体の1日のリズムを遺伝子レベルで解明する端緒を拓いた偉大な業績と評価されています。

このピリオド遺伝子がマウスにも存在することを発見したのは金沢大学の程肇教授です。その後、ショウジョウバエと同じメカニズムが哺乳類にも存在すること、そして、生活のリズムと体内時計がうまくマッチしなくなると、ガンや代謝疾患などのリスクが高まることも分かってきたのです。

夜更かしや朝寝坊などで体内時計が乱され、眠気や集中力低下を招く「社会的時差ボケ」にならないように心がけることが大切で、朝食は体内時計のズレを修正する重要な役割を担っています。

朝起きたらカーテンを引いて光を浴びること、起床して1時間以内に朝食をとること、朝昼兼用食(ブランチ)は避けるなどが、社会的時差ボケの何よりの予防策と言えます。