麻しん(ハシカ)の流行が さらに広がっています

MRワクチン 未接種のお子さんは早く受けましょう


  新聞やテレビで伝えられているように、関東圏を中心に麻しん(ハシカ)の流行が拡大し、休校になった高校や大学が相次いでいるようです。

 この流行が関西に飛び火したのか、大阪府では第19週に47例(第1419週で総計93例) の報告があり、大阪狭山市の専門学校でも30人の集団感染が判明し教職員・学生652名に対して麻しんワクチンの緊急接種が行われています。

今回の流行の特徴は、子どもよりも大学生などの大人の患者さんが多い「成人麻しん」が中心になっていることです。

麻しんウイルスは感染力が極めて強く、接触しなくても同じ部屋にいただけでも感染してしまうこともあります。

成人の間で流行するということは、子どもと違って行動範囲が広いだけに乗り物や人が多く集まる場所での二次感染とか、「子どもの病気」という感覚から麻しんに対する警戒心が比較的薄い内科待合室での院内感染が起こりやすいことを意味します。

昭和53年に義務接種化された麻しん予防接種も、平成6年に「義務」から任意の「勧奨」に切り替わって接種率が落ちた時期もあって 1)予防接種を受けていない人がいることや、2)接種しても防衛力である抗体ができないケース(Primary vaccine failure:プライマリー・ワクチンフェイラー:数%と考えられています)、3)一旦抗体が形成されても年月が経って抗体が減り免疫が弱まった場合(Secondary vaccine failure)などの理由から、麻しんにかかる可能性の強い成人(感受性者と呼びます)が増えていることなどが背景にあると思われます。

麻しんが適当に流行っている状態ならば、抗体が減ってきても周りの麻しん患者のウイルスの影響を受けて再び免疫が増強されるという現象(ブースター効果booster追加免疫効果=追い打ち効果)が得られ、麻しん感染から護られている状態が長期間にわたって続くことが多かったのですが、流行が中途半端に抑制されるとそのような機会が減ってしまって初回ワクチンの効果が年月と共に徐々に薄れてしまうのです。

ワクチンを2回接種することによってこのような状態を避けることができるため、欧米では2回接種が一般的ですが、ワクチン後進国のわが国では昨年6月からやっとMRワクチン(麻しんと風しんの混合ワクチン)の2回接種が制度化されることになりました。

この新制度の定期接種も、厚労省の広報活動が不十分なのか、保護者の意識が足らないためなのか、第2回目の接種(小学校入学前の1年間)率は極めて低いことは報道された通りで、本年3月に行われた国立感染症研究所の全国調査では約30という低い接種率が報告されています。

麻しん蔓延を防ぐには、95%以上の初回接種率(1歳児)が必要と考えられていますが、中には90%を超えている地域もあるものの、残念ながら全国レベルでは約82に留まっているのが現状のようです。

過去の流行に着目しますと、2000年(平成12年)には全国的な麻しんの大流行があり、小児科定点からの報告数は全国で22,479例、そのうちの18.1%にあたる4,077例が大阪からの報告というように大阪での流行が飛びぬけていました。

感染症新法に基づく新制度では、18歳以上の麻しんを「成人麻しん」とし、基幹定点から毎週報告を受けることになっています。2000年の成人麻しんは全国416例で、報告数第1位の東京都は115例(27.6%)、第2位は神奈川県62例(14.9%)で4月から8月に流行が目立ち、大阪は9例で2.2%の第9位となっています。

この報告数は基幹定点からの報告の忠実度に左右されるため、成人麻しんの数字は必ずしも実態を表しているとは言えないようです。

定点からの報告数は実際の患者さんの数のごく一部にしかすぎません。定点だけではなく、麻しん患者の全数を把握しようという試みが各地で推進されているようですが、このようなサーベイランス(発生動向調査)を整備することは、予想されるインフルエンザ・パンデミックの初動対応と対策にきっと役立つものと考えられ、そういう意味でも、全数把握の全国展開のためのネットワークづくりを急ぐ必要がありそうです。

麻しんにばかり注目が集まっているようですが、vaccine failureがこのような規模で起こるのであれば、流行状況から言って「風しん」の場合も同じように、予防接種を受けた人でも成人になれば免疫がなくなっているものと考えておかなければならないでしょう。

麻しん単独ワクチンの品不足も危惧されていますが、感染機会の多い人、特に女性は将来の妊娠に備え、麻しんの単独ワクチンではなくMRワクチンを接種するほうが賢明なのかもしれません。


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