鉛中毒の亡霊 ?

中国製の玩具に使われている塗料に、有害物質の「鉛」が混入していたとして、米消費者製品安全委員会(COSC)は9月26日、幼児向け人気キャラクター「機関車トーマス」 などの木製玩具20万個を追加回収すると発表しました。

追加回収という意味は、6月に米メーカー「RC2コーポレーション」が150万個を自主回収、米マテルも、8月1日に100万個、14日にバービーやバットマンのキャラクター商品1,860万個を世界で自主回収し、さらに9月4日には84万8千個の回収を発表しているからです。

日本でも15,311個が販売されているそうで、輸入販売元のソニー・クリエイティブプロダクツは、「フィッシングドック附属のカーゴカー」、「ブレーキレバー付トード」、「コンダクター付ベーシックセットの木」、「コンダクター付ベーシックセットの信号機」 などの11商品を回収対象にしています。

これらの措置は、9月にオーストラリアのシドニーで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議において、世界的に不安が高まっている中国製品の安全性問題が議題に上るとした米下院エネルギー・商業委員会の分析に基づくものです。

事実、閣僚会議で採択された共同声明は、「人間の安全保障」の項で、「消費者の安全と健康を確かなものにするために、リスクに基づいた科学的なアプローチを強化し、安全基準を改善、協力を深める」としています。

鉛は神経系に障害を引き起こす物質として、米国環境保護庁(EPA)によって、子どもの健康被害を招きかねない5つの有害物質のひとつに数えられています。

多動学習障害注意欠陥障害、知能低下などの症状も含まれます。

鉛中毒になると、過敏性が強くなり、性格の変化、精神機能の低下、頭痛、食欲不振、抑うつ状態貧血などの症状が現れますが、特に子どもでは、知能の低下や攻撃性の高まり、非行などの問題行動が起こり、中毒レベルになると発育が障害されるばかりか身長の伸びが抑制されるという結果を招きかねないのです。

乳児の原因不明の脳障害、痙攣、発育障害や貧血の原因が、母親の体に塗られた「白粉に含まれる鉛白」によるものと解明されたのは1887年のことでした。

乳房を吸う時に一緒に口から入るからです。

それから45年も経った1934年になってやっと鉛を使用した白粉の製造が禁止され、翌年には販売禁止となって、このような不幸な子どもは見られなくなりました。

しかし今でも、鉛は低いレベルながら生活環境の中に存在しています。

バッテリーやつり用のおもり、食器などに使う釉薬などだけではなく、1980年までのハイオクガソリンには鉛が含まれており、排気ガスとして撒き散らされて地表に蓄積されている怖れがあります。

また、1978年以前の古いペンキで塗装された窓枠や外壁には鉛が含まれているかも知れません。

剥がれ落ちたペンキのかけらを口にする可能性だって否定はできないのです。

最近でも、金属製アクセサリー、特に中国や韓国の製品には高濃度の鉛が含まれているものがあることが分かっており、子どもがそれをなめて遊ぶことだって考えられなくはないでしょう。

実際、昨年2月には、4才の子どもがブレスレットの部品を誤飲した後に、鉛中毒で死亡するという事件がアメリカから報告されています。

水道管の一部、特に本管から各家庭への引き込み管には1970年代まで鉛管が使用されている地域もあり、銅管の接合に使用されるハンダにも鉛が含まれているようです。

1999年には852万世帯、05年でもまだ約547万世帯の引き込み管に鉛製水道管が使用されているという、厚生労働省の調査結果もあるのです。

朝一番の水道水には鉛濃度が高くなっている可能性があり、「朝一番の水は飲まないように」して、しばらく流しっぱなしにしてからの水を飲むようにしましょう。

家族のだれかがタバコを吸い受動喫煙が続いている子どもでは、血中の鉛濃度は受動喫煙がない場合に比して高いというデータも見られます。

受動喫煙によって「子どもの知能の発達が劣る」というのは既に常識となっており、受動喫煙の機会が多いと子どもの読解力や算数の成績が悪くなるという研究結果が、05年に米国シンシナティ子ども病院のチームから発表されています。

これは、ニコチンが分解されてできる「コチニン」の血中濃度に比例して読解、算数、論理的思考力の点数が低くなるというテスト結果に基づいたものだそうです。


戻る