スイッチOTCって 聞いたことがありますか?

 

 最近、OTCという文字を新聞でよく見かけるようになりました。

 日本大衆薬工業協会が全面広告を出したりしていますから目にされた方も少なくない筈です。1960年に制定された薬事法が2009年4月には改正され、従来は「大衆薬」、「市販薬」などと呼ばれていたものがOTC医薬品」へと名称変更になります。それに伴い、上記の協会は「日本OTC医薬品協会」へと変更になるそうです。

OTCというのはOver-the-counterの略で、薬局などで販売されている一般用医薬品のことです。以前なら医療機関でしか処方できなかった薬を、薬局やドラッグストア向けに「大衆薬」に転用したものは「スイッチOTCと呼ばれ、効能も強められていることになります。

従来からも、病院と同じ成分の薬が大衆薬として売られてはいましたが、最近は、医療費削減を狙った規制緩和によって、胃腸薬、消炎鎮痛薬、さらには目薬や点鼻薬などにも広げられ普及が進んでいるものです。比較的副作用が少なく、安全性の高いもので歴史のある薬という建て前はあるのですが。

昨年12月にはエスエス製薬が、痰の除去剤である「アンブロキソール塩酸塩」(医療用は独ベーリンガーインゲルハイム社のムコソルバン)を配合した総合感冒薬「エスタックイブファイン」を、今年の1月には、大正製薬が「パブロンエースAX」を発売して話題になりましたし、抗アレルギー薬「ザジデン」もテレビCMで既におなじみでしょう。

このような医療用成分の大衆薬への転用は今後も次々と進められる予定で、大衆薬市場の期待は膨らむ一方のようです。効能が比較的高い成分を処方箋なしで手に入れることができる利便性はありますが、副作用などに対する配慮がおろそかになるという恐れも大きくなることが危惧されます。

医療機関が発行した処方箋に基づき薬局が薬を調剤する「医薬分業」は、平成17年度には54%にまで達し、薬局窓口での薬剤師による服薬指導によって、重複投薬や危険な薬の相互作用などが防止されるというメリットが活かされるようになってきました。

医薬品の製造・販売などに係わる承認・許可制度は薬事法で規制されており、平成17年に施行された改正薬事法でも大きく変わりました。

市販後の医薬品などの副作用情報は、主に、医療機関と薬局からの医薬品・医療機器等安全性情報制度によって集積されていますが、OTCの普及はこのレールからはみ出す恐れがあり、副作用の把握や収集の遅れにつながりかねない懸念が残ります。

厚生労働省の説明によると、今回の薬事法改正では、医薬品が3グループに分類され、最もリスクの高い医薬品を販売する場合には、薬剤師が医薬品についての情報を提供することを義務づけした上で、相談の機会をも増やす配慮がなされるということです。

従来、大衆薬は全て薬剤師による販売が義務づけられていましたが、今回の改正では、リスクの低い薬については薬剤師でなくても、登録販売者がいれば販売できるようになります。

ドラッグストア各社は、一般社員全員にもこの資格を取らせ店舗運営を積極化する姿勢を鮮明にすることが予想され、異業種からの参入もより容易になって活況を呈することになるでしょう。なにしろこの業界の市場規模は、2010年には7兆円に上るものと予測されていますから。

医療費の膨張に頭を悩ませている厚労省や中医協は、風邪薬などの簡単な薬は医療機関での処方から外して健康保険が利かないようにする構想をもっているようですが、OTCの普及促進はこういった動機と無関係とは言えないでしょう。

セルフメディケーション、自分で治せる病気は病院にかからず自己責任で治す、OTCの役割は正にこれに極まるわけですが、症状が進み手遅れになってから慌てて医療機関に駆け込むという落とし穴がないわけではありません。

いずれにしても、店頭や添付文書の医薬品情報をしっかり確認し、効果と安全性を担保した上で、適正に使用することが何よりも大切なことではないでしょうか。


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