強毒性鳥インフルエンザの被害は白鳥だけ?

 東北や北海道などで見つかった白鳥の死骸から、強毒性の「H5N1型」鳥インフルエンザウイルスが検出される事件が相次いでいます。日本では、昨年の春に熊本県のクマタカの死骸から検出されたH5N1型以降は感染例がなく、安心していた矢先のことです。

 ロシアや中国東北部などで強毒化したウイルスがカモ類などによって運ばれ、湖など狭い水域でフンなどを通じて白鳥に感染したものと推察されています。

 感染を繰り返しているうちにウイルスが遺伝子変異を起こして強毒化することは、鳥取大学などの実験で確認されています。

 H5N1型は、4月以降、秋田県の十和田湖、北海道別海町の野付半島でも検出されており、5月10日には、北海道佐呂間町のサロマ湖でも死んだ白鳥から検出されました(全国で今年3例目)。

鶏への感染拡大を危惧した環境庁や北海道は、死骸発見現場から30`以内にある養鶏場の立ち入り検査と、消石灰などによる消毒を実施したとのことです。

専門家の多くは今後の感染拡大については楽観的ですが、日本で越冬した白鳥の殆どは既に繁殖地であるシベリア方面に帰ってしまった後だからです。

野鳥などが大量に死んでいるという報告もないところから拡大の懸念は少ないとはいうものの、野鳥などを介して鶏舎に持ち込まれたりすると飼育されている鶏が全滅しかねないだけに今後の発生状況から目が話せないでしょう。

たとえ小規模の感染例が続発したとしても、感染したトリやフンなどと密接な接触をしない限り人には簡単には感染しないことは既に報告したとおりです。人との接触を繰り返しているうちに、ウイルスが突然変異を起こしてヒトからヒトへと容易に感染するタイプになった時にはパンデミックに直結することになりかねないことは言うまでもありません。

このように白鳥から強毒性のH5N1型鳥インフルエンザウイルスが相次いで検出刺された事態を憂慮した環境省は、5月12日に専門家会議を開き、感染経路の解明や対策の議論を始めています。野鳥のウイルス保有状況の監視体制強化や、従来は西日本が中心であった水鳥のフンの調査を東日本に拡大する方針などが協議されたということです。

トリインフルエンザのサーベイランス(感染動向調査)のみならず、新型インフルエンザ対策についてはわが国は諸外国に比して非常に遅れており、今回の専門家会議についてもごく一部の新聞しか報道していないというように、マスコミの認識や危機管理も不十分の一語に尽きる感がしないでもありません。

わが国での検出以前から全国的な感染拡大に見舞われていた韓国では、家禽類の輸送車両に対する登録制の導入、感染地域以外への移動禁止措置の徹底、加熱していない鶏やカモの販売の制限、店内での生きた鶏などの処理・加工の禁止などの追加対策を9日に打ち出し感染拡大の防止に努めています。