新型インフルエンザ対策をめぐる議論も活発に

 本格的な梅雨の訪れで各地に豪雨による被害がでているようです。夏至も過ぎて気温もうなぎ登り、梅雨寒むとの温度差が体調を狂わせがちですから注意が必要でしょう。

 大きな流行にならなかった今季のインフルエンザでしたが、ワクチンや抗インフルエンザ薬の備蓄などをはじめ、新型インフルエンザ対策に関して議論はヒートアップしている感が強いようです。

 その背景には、わが国の新型インフルエンザ対策が諸外国に比べて立ち遅れているという事情があり、このような状況に対して危機感を抱いている集団も少なくないからではないでしょうか。

 日本経団連は6月12日、「プレパンデミック(大流行前)ワクチン」の接種対象を全国民に広げるとともに、「パンデミック(大流行)ワクチン」開発を急ぎ、全国民に早期に接種される仕組みづくりについて、技術や投資面での支援を政府に求める提言を発表しました。

与党のプロジェクトチームPT)は、6月20日、治療や予防に使う抗インフルエンザ薬の備蓄量を、国内人口の4〜5割分に増やすべきだとする提言をまとめ、これを政府の「骨太の方針」や「行動計画」にも盛り込む予定ということです。

 現在の備蓄量は、タミフルが2,800万人分、リレンザが135万人分の計2,935万人分で人口の23%分にすぎず、フランスの53%、英国50%、豪州42%などと比べても心もとないのは言うまでもありません。

 備蓄に関しては、日本のほうが発想だけは先行していたのです。1997年にH5N1型インフルエンザが香港で勃発した時には、タミフルを備蓄しようという考えは日本だけにしかなかったのですが、その後は世界の潮流から取り残された思いがします。わが国だけが備蓄を進めたところで諸外国からの援助要請が相次いだ時の混乱が大きすぎ、それを懸念して計画が進まなかったとも言われています。

 備蓄薬の課題の一つは、備蓄が始まった頃の初期の薬は期限切れが迫っていることです。

これまで使わずに済んだのは幸運で喜ばしいことなのですが、有効期限が過ぎれば廃棄処分になり、無駄になるばかりか経済的な損失も無視できません。備蓄管理を厳重にした上で、医療機関などに分散備蓄して普段のインフルエンザの治療に順次使用し、使用分を補充して備蓄量を一定に保つなどの工夫をしないと、新型が流行しない限り何年かごとに同様の問題が起こることになります。

 政府の「新型インフルエンザ専門家会議」「プレパンデミックワクチン」を、臨床研究の形で医師や検疫官ら約6,400人に9月頃から事前接種する方針を決め(08年4月15日)、2,000万人分の備蓄を完了したことは既にお知らせしました。(084.22、「新型インフルエンザ対策は万全か」)

 日経新聞のアンケート調査でも、事前接種を希望する人は65に達しており、有効性や安全性をチェックし、結果が良ければ09年度に医療従事者のほか警察官や国会議員など社会機能維持者1千万人に対象を拡大する方針になっています。さらに接種対象者を拡大するために、6ヵ月以上の子ども120例を対象として有効投与量などの治験を年内に開始することも明らかにされています。(20年4月16日)

 もちろんこのワクチンが新型インフルエンザに効くかどうかは未知数ですが、効果があるにしても、効果は接種後どのくらいの期間持続するのか、接種や感染による追い打ち(ブースター)効果が得られるのかどうか、更には、ワクチン製造のために選択されたインドネシアやベトナムなどのウイルスと異なった新型ウイルスにも効くのかどうか、ワクチンの課題は少なくないようです。

プレパンデミックワクチンは、米国においては大統領命令で全国民にゆきわたるワクチンを準備し、スイスでは、全国民だけではなく滞在中の全観光客も対象にした備蓄が完了したと伝えられています。

 この辺のギャップは、新型インフルエンザに対する危機感の相違としか言いようがありませんが、石原東京都知事は国の楽観的態度に対して自ら異論を唱え(08年6月2日、産経新聞)、東京都では、新型インフルエンザ患者の検査や入院隔離を担う協力病院に対して施設整備費を助成するなどの支援策をまとめています。