最悪のシナリオ ? (3)

 (7) 新型インフルエンザにタミフルが効かないとしたら?

 季節性インフルエンザのウイルスにもタミフル耐性株が増えてきている事実は既にお知らせしたとおりですが、インドネシアを中心に広がりつつあるトリH5N1型ウイルスに対しては、今のところ有効であることが確認されています。

しかし、ウイルスが変異して、ヒト→ヒト感染が広範に起こるようになった場合にでも、そのまま効果が期待できるかどうかについては不安がないわけではありません。

わが国の新型インフルエンザの薬剤対策はタミフル備蓄に偏って進められているだけに、タミフルの効かないウイルスが大流行したら場合を考えると、身の毛もよだつ思いがします。そうならないことを祈るしかないのですが、タミフルリレンザに代わる第?、第4の新しい抗インフルエンザ剤が待望されているゆえんはそこにあります。

各メーカーは新薬開発にしのぎを削っており、何種類かの薬に目途はついてはいますが、その安全性や有効性が確認され、広く使用できるようになるまでにはもう暫く日にちがかかるようで、パンデミックに間に合うことを祈るばかりです。



 (8) パンデミックが来たら、備蓄中のタミフルは誰でも使ってもらえるのですか?

 政府はパンデミックに備えて2,500万人分のタミフル(2億5千万カプセル)の備蓄を進めていますが、いざ大流行となった場合に、どのようなルールに従って医療機関に薬を配分するのか明確な指針があるわけでもなさそうです。薬の奪い合いになるのは目に見えており、大混乱になることだけは避けようがないでしょう。特に薬剤が不足してきた場合には誰に優先的に使用するのか、優先順位の明確なセオリーがないだけにブーイングの大合唱につながりかねない事態が予想されます。

備蓄の偏在や流通の不備・不均衡を考えると、感染予想者の総所要量の1.5倍の備蓄が必要ではないかとみた方がいいのではないでしょうか。医療機関が個別に十分量を備蓄するのがベターなのですが、薬の有効期限の問題や、いつ発生するか分からないパンデミックに備えるという発想はなかなか広がりそうもありません。

 厚生労働省は、新型インフルエンザの発生に備えて「対策ガイドライン」を示していますが、その中で、「従業員の4割が10日間程度欠勤する事態が複数回にわたって訪れること」を想定して対策を立てることを企業に求めています。しかし、体力のある大企業はともかく中小企業では対策が遅れがちで、企業規模による格差が拡大しつつあると言われています(1230日、産経)。

いかに損害を最小限にとどめて業務を継続するか(BCP)、危機管理の徹底化を進めている企業が少なくないことはお話した通りですが、成田空港でも「行動計画」の基本方針をまとめ、タミフル1万錠や医療用マスク5万枚などを備蓄し、旅客や従業員の安全確保を目指すそうです(1227日、産経)。

企業でも、健保組合や社内診療所においてタミフル備蓄を進めている会社が多いようですが、どのような基準で処方し配分するか難しい局面が続出することでしょう。



(9) パンデミックになったら、10歳代でもタミフルは使用可能ですか?

タミフルとの関連性は不明ではあるものの、タミフル服用後に幻覚幻視、飛び降りなどの異常行動等の精神・神経系症状を起こす報告が相次ぎ、2007年3月からは10歳代の患者への使用が原則禁止」となっています。

厚生労働省は昨年1229日、使用を解禁すべきかどうかの判断を先送りすることとし、少なくとも今シーズンは中止措置を継続する方針を決めたということです。(1230日各紙)

関連性を調査するために組織された厚労省研究班の大規模疫学調査でも結論が得られなかったことによる今回の措置ですが、「異常行動と服用との因果関係を明確に否定するのは難しい」という解析の結果が解禁延期につながったようです。

研究班が「結論は慎重に解釈すべき」とし、厚労省は今後も全国の医療機関を通じ、患者がどんな場合に異常行動を起こしやすいかなどの調査を継続する方針を打ち出したことから、パンデミックが近未来に発生した場合でも、10歳代の患者にはタミフルは使えないことになります。当然のこととして、もう一つの抗インフルエンザ薬「リレンザ」の品不足が深刻になることも覚悟しておかなければならないでしょう