新型インフルエンザ 一律閉校措置は解除されはしたのですが
                         
                                  

 23日には兵庫県で、25日からは大阪府内で休校措置が解除されました。

 大阪府の橋下知事も23日に「都市機能回復宣言」を出し、府民に「普段どおりの生活を」と呼びかけたのです。

保育園も一律に閉園されていた市町村もあり、仕事に出なくてはならないお母さん方の悩みの種でした。神戸市では5月28日に「安心宣言」が出されたものの、兵庫県の「終息宣言」は30日現在でもまだ見送られています。

 新規の感染者発生も少なくなり、安全宣言も出されて新型インフルエンザ騒ぎは一件落着の感があります。しかし、新しく感染者が出ても地下にもぐって表に出なくなっただけのことで、本当に減少傾向にあるのかどうかさえ誰にも分からなくなってしまったというのが本当のところでしょう。

 

弱毒型で、季節性インフルエンザと大差がないというのなら、今回の流行がもたらした被害の大きさを考えると、そっとしておいた方が世のためという妥協が働いたとしても無理からぬことなのかも知れません。

 何しろ今回の騒動の影響で、JTBは旅行のキャンセルで約150億円の減収になったと発表。また、京都市の調査では、約960校、13万人が京都への修学旅行の中止・延期を決めたということです。文科省のまとめでも、修学旅行を中止したり延期したりした学校は、公立の小中高校など計2594校に及ぶことが分かっており、大阪バス協会の調査では、大阪の貸切バスキャンセルによる推定損失額は10億円以上に上ることが判明しています。

18日未明の「流行警戒宣言」に基づいて実施された今回の一斉休校でしたが、今後の休校措置について府教委は、「患者が複数発生した学級は閉鎖」、「複数の学級閉鎖の場合に学年閉鎖」などとする基準を公表しています。

 

 学校や幼稚園が再開され街に活気が戻ってからも、医療機関では患者さんの姿が減ったままです。インフルエンザをうつされると困るから簡単なカゼなら受診しないという動機もあるのでしょうが、インフルエンザに限らず、学校や買い物などの社会活動が控えられると流行が抑えられる何よりの証明となったような気がします。

感染研の試算でも、外出制限をすると感染者は15分の1になるとも言われています。

 昨年、三菱総合研究所と千葉大学、国立感染症研究所が行ったシミュレーションでは、新型インフルエンザが発生した場合、「学校閉鎖」、「鉄道運休」、「流行時のワクチン接種」を全て実施した場合、感染者数は何もしなかった場合の約3分の1になるという予測も出されているのです(08.7.4、日経報道)。

 

新型インフルエンザ  乗り物の中での感染とマスクの効用

 マスクの品切れが社会問題化する一方、マスク機能限界論が出た途端に、電車やバスの中でマスクをしている人はめっきり減ってしまったようです。欲しくてもマスクが手に入らないことも作用してはいるのでしょうが。

 29日からは、JR西日本や関西私鉄各社、日本航空、全日空もマスク着用を解除しています。

 誰一人クシャミも咳もしていないのに、がらがらの車内で全員マスク姿というのはいかにも異様な光景に映ります。かぜをひいた人がマスクをするのはエチケットというもので、満員電車の中などでは一定の効果はある筈です。と言うのも、新型インフルエンザが発生した場合、都市部では、満員電車の車内が最大の感染拡大の場になるとみられているからです。

 

 東大の神里特任准教授は、朝日新聞の文化欄で「マスク着用と世間の目」と題する評論を展開されておられます(5月23日朝刊)。氏の意見は、歴史学者・安部謹也氏の「世間の概念」を引用し、集団行動的なマスク着用は「我々の共同体の中に生きている『世間の掟』が行動原理として働き、近代的な契約思想や合理主義などとは別のルールで人々の行動を律している」 からというものです。

一斉にマスクをするのは、衛生学的理由に基づくことに異論はないものの、日頃は隠されている日本人の古い思考パターンが表出し、マスクをしないで感染してしまった時の「世間の目」を怖れる結果ではないかというものです。

 氏の意見には共感できる部分もない訳ではありませんが、マスクが必要と言われると一斉に従う日本人の素直さや衛生知識の徹底ぶりは評価に値するもので、必ずしも古い行動原理によるものばかりではないことも明らかでしょう。

 紫外線の害が解っているにもかかわらず、海外の観光地などで帽子をかぶっているのは殆ど日本人だけというのは見慣れた光景です。紫外線と皮膚がんの関係は外国の人々も理解している筈ですが、一向に頓着する気配が無いというのはこの種の問題に対する意識や心構えの差から出たものではないでしょうか。

ニューヨークタイムズはこうした日本の現状を、「マスクに手洗い、日本は偏執狂」と揶揄しているそうですが、文化の違いと言ってしまえばそれまでながら、健康に留意し、予防対策に前向きに取り組もうとするという国民性があればこそ、世界一の長寿国の地位を保ち続けられているようにも思います。

 

 公共交通機関が感染の温床になりかねないことははっきりしており、国立感染症研究所を中心に各種の試算が行われています。

 

乗客を定員の2割に制限すれば、国内での流行時も想定患者数を約26分の1に抑制できるという話が出ています。ただ車内で1、2bの間隔を開けることが感染防止に効果的だとしても、乗車できる人の数がラッシュ時の2、3割にとどまるというのではホームや駅の混雑が新たな感染拡大の懸念をもたらすことになりかねません(5月15日、産経)。

 

感染研の試算では、東京在住の1人の日本人が海外で新型インフルエンザにかかり帰国すると、わずか2週間で感染が北海道から沖縄まで全国に広がり、感染者数は、8日目には8600人に、2週間目には約36万人に達するのだそうです。
 これは首都圏や京阪神など8地域(全人口の56%をカバー)の人々の移動パターンや国土交通省の旅客調査データを活用してシミュレーションしたデータに基づいています。