新型インフルエンザ対策 ワクチンは?

       09..25

 57歳の沖縄県男性に次いで、18日には神戸市の77歳男性が、19日には名古屋市の80歳代女性が新型インフルエンザで死亡、わが国での死者は3人となりました。

いずれも持病を有するハイリスク群の患者さんで、リスクの高い人の重症化予防対策が急務となってきています。

第1波の流行は夏に下火になり、秋以降、第2波の流行に見舞われるという予測は果たしてどうなるのでしょうか。しかし、過去のパンデミックの情報は、必ずしも参考にならない面が少なくないようにも思われます。

というのも、診断技術がこれほど発達した現代でも、インフルエンザの診断はしばしば正確さを欠くことが少なくありません。今回の流行に限っては、迅速診断が陰性でもPCR法などの遺伝子診断では陽性となる例が相次ぎ、改めて迅速診断の精度検定が求められています。ましてや診断技術や疫学のレベルが十分とはいえない1918年スペイン風邪の大流行においては、春から秋まで下火になったとされる時期の流行状況の詳細もはっきりしないことから、その間の経過を参考にしにくい点も少なくないでしょう。

ただ新型インフルエンザに関しては、寒くなるにつれて流行規模が拡大するのではないかという見方が大勢を占めていることだけは間違いないようです。

そこで予防対策として最も期待されるのは「ワクチン」ということになります。

しかし、インフルエンザワクチンには、接種を受けた全ての人を発病から守るだけの効果はなく、感染拡大を防げるものではないという限界を持ったワクチンであることを認識しておく必要があります。

特に新型インフルエンザのワクチンには、免疫のつきようなどの効果の具体的なデータもなく、さらに、副反応は従来通りのワクチン並みなのかどうか、また、季節性インフルエンザのワクチンを受けた後に接種しても抗体が期待通りに上がるのかどうかなどについても不明な点が少なくないようです。

国内ワクチンメーカー4社では、7月下旬から8月に生産が本格化しましたが、当初予定の2500万人分の製造は難しく、14001700万人分が確保される見通しです。早ければ10月にも最初の製品が流通し始めると期待されています。

政府は5300万人分を用意したいとして、舛添厚労相が不足分のうち2000万人分の輸入を検討する考えを表明していました。これには異論も多くまだ結論が出るには至っていませんが、8月23日、河村健夫官房長官は埼玉県での衆院総選挙の街頭演説で「不足分は輸入し、今年度予算の5000億円の予備費で対応する」旨を明らかにしています。

輸入反対の意見の論旨は、ワクチン不足が問題になっている折、ワクチン製造技術を有するわが国など先進国が独り占めすることは、医療基盤の脆弱な途上国を切り捨てることになり、国際的な批判を受けかねないことを懸念するからです。

このワクチンは、新型1種類しか含まれない「単抗原」ワクチンですが、どの年齢も0.5_gを2回接種する必要があります。

厚労省は「ワクチンで感染の拡大を防止できないのであれば、定期接種ではなく、全額自己負担の任意接種が基本」という見解を示しています。このへんの認識はアメリカとは隔たりが見られ、わが国がワクチン後進国といわれるゆえんでしょうか。

新型インフルエンザワクチン製造のあおりを受けて、従来の季節性インフルエンザのワクチンは昨シーズンの8割程度の4000万人分しか確保できない見通しです。13歳以下の児童には2回接種が必要ですから、両方受けようと思えば4回も注射することになります。

現在のワクチンは有精卵を使う製法のためにウイルス培養に長期間かかり、製造量にも限界があります。そこで阪大微生物病研究会では、犬の腎臓細胞で大量にワクチンを作る「細胞培養法」を利用した施設の建設に着手、13年からの運用開始を目指しています。この方法ですと、半年間で6千万人分を確保でき、新型ウイルスにも即応できる利点があります。

米製薬大手のバクスター・インターナショナルや、英医薬品大手のグラクソ・スミスクラインはすでに、この細胞工学技術を駆使して製造期間を短縮したワクチンの生産に成功し、7月から、英国はじめ世界各国に向け出荷を進めているようです。

ワクチンの供給量に限りがあることから、重症化しやすいハイリスクの人に優先的に接種すべしという意見も少なくありません。

インフルエンザの専門家や医療倫理学者、重症化しやすい疾患の患者代表などを集め、厚労省が8月20日に開催した「新型インフルエンザのワクチンに関する意見交換会」でも、「重症化予防を目的にすべき」などの意見が相次ぎ、健康被害を最小に抑える目的を支持する意見が目立ったということです。