新型インフルエンザ 感染とワクチン

                                               09.9.15

 

 8月31日〜9月6日の1週間の全国における集団感染報告数は、前週比1.7倍増の2318となりました。新学期が始まった学校での流行拡大がおもな原因のようで、東京(350件)、大阪(316件)、千葉(170件)など大都市圏での流行が先導し各地で学級閉鎖が相次いでいます。ずば抜けて報告数の多かった沖縄県は既に流行のピークを越え、この週は55件に減ったそうです。

 

 現在の定点当たり2.5前後という数字は、今冬第4週のピーク37.45という値に比べてはるかに低く、流行規模としてはまだまだ小さいほうなのです。

 流行規模がこの程度に落ち着いたまま、タミフル耐性ウイルスの出現も稀で、しばらくは病原性や感染力も強くならないとしたら、今のうちに感染してしまった方が得策という専門家もいるくらいで、ワクチンの確保や有効性に不透明な面が残されている限り、あながち暴論とも言えないようです。

 しかし、病原性は季節性インフルエンザと余り違わないと考えられてはいるものの、9月9日には12人目の死者が出てしまいました。その大阪府四条畷市の45歳男性は基礎疾患もなく死因も不明ですが、インルエンザが直接死因だとしたら初めてのケースということになります。

 また、小児のインフルエンザで問題になるのは「脳症」ですが、今回の新型インフルエンザでは、10歳未満の小児を中心にすでに約20人の患者さんが発生しており、流行の拡大と共に増加が懸念されます。

 

 世界的なワクチン不足が懸念されるなか、欧米各国はワクチン戦略を強化しています。

フランスは9月28日から希望者のほぼ全員(人口の約8割の4700万人)を対象に無料接種に踏み切り、ベルギーやスペインも10月中にワクチン接種を開始の予定とされています(8月28日、日経夕刊)。一方、人口3億人の約半数分を当面の政府調達目標としている米国では、米国民の62%が接種を希望している(米国世論調査)ため、10月中に準備可能な最大5200万人分との開きを埋める算段は見つからないようです。接種は10月中旬から開始される予定ということです。

海外からのワクチン輸入が国際的な顰蹙(ひんしゅく)を買う懸念が残るわが国ですが、サノフィ・アベンティスという大ワクチンメーカーを抱えるフランスでも、その他の欧米諸国も、英グラクソスミスクライン、スイスのノバルティスなど数社からワクチンを調達しているの、余り国際問題にはならないようです。これら各社には複数の国でワクチンを製造している多国籍企業が多く、輸入が非難されることはないのかも知れません。日本はスイスのノバルティス社と英グラクソ・スミスクライン社の2社から4200万人分を輸入する予定になっているそうですが、早くて12月下旬からの接種が予定されています。

欧州各国にワクチンメーカーが集中している関係で、ワクチンの確保には欧州に利があるのは残念なことです。

ノバルティス社のワクチンには、効果を増強するための「アジュバント」という免疫賦活剤が添加されており、1回接種でも免疫が得られることが確認されています。しかし、接種部位の発赤・腫脹などの局所反応が強くなる恐れもあることから、新たな議論を巻き起こす可能性も残されています。

 今年度中に約1800万人分が出回ると見られる国内産のワクチンには、このアジュバントは含まれてはいませんが、これらは専ら優先接種対象者に使われることになっており、「その他の者」に該当する人には輸入ワクチンが接種されることになりそうです。

 このようにワクチン不足が懸念されるなか、ノバルティス社のワクチンだけではなく、米国NIH(国立衛生研究所)は9月11日、一回の接種で、接種後810日後には8割以上の人に有効な免疫ができることが実証されたという見解を発表しており、これが事実とすれば接種を受けられる人が増えるという朗報になりそうです。