安全な生肉なんてあるのでしょうか ?

                                                2011..10

               

  富山、福井両県の焼肉チェーン店での集団食中毒事件は、死者4人、重症者24人、患者104人、(8日現在)という最悪の事態をむかえることになりました。

 1996年の大阪府堺市での集団食中毒の原因となった腸管出血性大腸菌O157ならぱ想定されうる事態とはいえ、O111による事例としては前代未聞ということになります。

生食用の肉かどうかをめくり、食肉卸売業者と焼肉チェーン店との言い分が食い違っていることが問題にされているようですが、そもそも「生食用の肉」というものが存在するのかどうか、極めて疑わしいことです。

肉の表面を削って肉表面に付着した菌を取り去る「トリミング」をしたかどうかも焦点になっているようですが、トリミングを施したからといって安全な生肉と言えるのかどうか。肉に標しがついているわけでもないでしょうから、たとえトリミングされていても流通の過程で未処置の肉と混同されてしまうことだってあるでしょう。

 トリミングされているかどうかを問わず、特に抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は、生で食肉(生レバーやユッケなど)を食べることは危険で、食べないようにすることが肝心です。

 堺市のO157事件を教訓に、大阪市保健所・感染症対策課では「腸管出血性大腸菌-O157など-」というパンフレットを毎年発行しています。

 「夏は要注意」、「1年中発生しています」という標題とともに特に強調されているのは、「ストップO157 子どもたちに生レバーやユッケなど生の食肉を食べさせないで!というアナウンスメントです。

 感染予防のポイントとしては、生肉、生レバーなどを食べないことは勿論、「食品は内部までよく焼いて食べること(中心温度が75℃で1分以上)」、焼肉のときは「生肉を取る箸と食事用の箸は別々にすること」などが必要で、調理や食事の際の手洗いの励行、まな板・包丁などの調理器具の洗浄、場合によっては塩素系消毒剤による消毒などは言わずもがなの予防法です。

 当院での経験でもそうですが、大阪におけるO157O26O111O128など腎障害性のベロ毒素を出す菌による腸管感染症で受診する乳幼児のおよそ1/2から1/3は焼肉屋で喫食した生レバーが原因となっています。

 患者の約10%が「溶血性尿毒症症候群HUS」を発症し、重症化すると乏尿・浮腫、けいれん、意識障害などを起こして死亡に至ることがあります。今回の4人の死亡例もHUSによるものです。

 O157O111などの大腸菌は、100個前後の菌量で人に感染を起こすほどに感染力が強く、20分に1回分裂を繰り返して1個の菌が24時間で数10億個に増加するとされています。