ポリオワクチンをめぐる混迷

OPV(経口生ポリオワクチン)? それとも IPV(不活化ポリオワクチン)?

                                                  2011.10.


 わが国の定期接種で採用されている経口生ポリオワクチンは、3ケ月〜90ヶ月の子どもに、6週間以上の間隔をあけて2回接種することになっています。

 9月7日の産経新聞は、「ポリオワクチン 『生』か『不活化』か、来年まで待つか

      −保護者や医師困惑、再流行の恐れも」 と題する記事を特集しています。

 この記事の核心は、現在開発中の国産不活化ポリオワクチンを組み込んだ4種混合ワクチン(従来の三種混合ワクチンDPT:ジフテリア、百日咳、破傷風に、不活化ポリオワクチンをプラスしたもの: DPT-IPV) が来年には導入される可能性があるので、今秋のポリオ生ワクチンをキャンセルして4種混合ワクチンを利用できるまで待つべきかどうかという戸惑いについて報告したものです。

しかし記事には不活化ポリオワクチンが来春から導入されるかのような誤解を招く表現もあったため、日本医師会は、「不活化ポリオワクチンの『平成24年当初からの実施予定はない』と内容の一部に否定的な見解を示し、その点について周知徹底をはかるように」 という通達を都道府県医師会に出しています。

 経口生ワクチンは、ウイルスを弱毒化して接種するもので、免疫は長期に持続するものの、接種後1537日にわたってウイルスが便に混じって排泄されるため、ごく稀に周辺の人にポリオを発症させる(二次感染)例があることや、接種を受けた子ども自身がポリオを発症する可能性を秘めています。以前、その率は400万人に1人程度と考えられていました。

  しかし、WHO(世界保健機構)は、接種100万人に2〜4人の患者が発生する可能性があると警告しており、わが国でも毎年数人が手足のマヒを起こしていると推計されていますが、見逃し例や非確認例を含めるともっと多いのではないかという見方も一部にはあるのです。

 この副反応を避けるために使用されるのが「不活化ワクチンIPVで、既に世界100ヶ国以上で採用され、安全なワクチンという評価が定着しています。

 この安全なワクチンを輸入して公費での接種を受けたいという要望も強く、不幸にしてワクチン禍に会ってマヒを残した子を抱える患者団体『ポリオの会』は、昨年12月に「不活化ワクチンの緊急輸入」を求めて約3万5千人の署名を厚労省に提出したものの、厚労省の返事は「輸入できない」というつれないものだったのです。

 国の対応に業を煮やした一部の医療機関は、この不活化ワクチンを独自に個人輸入して接種を奨めています。

前述の産経新聞の記事によれば、不活化ワクチン輸入会社によると、この1年で輸入されたワクチンは約15万本で、1人が3回接種したとすれば約5万人が自費で接種していることになると述べています。ただ、不活化ワクチンにはマヒを誘発するような副反応はないものの、不活化ワクチンだから絶対安全とも言えず、もし万一何らかの副反応が起こった時の対応や補償に不都合が起こることは避けようがありません。

 不活化ワクチンを受けても免疫の持続期間に限界があるため、4回以上の接種が必要となります。1回あたり4千円〜1万数千円の自己負担が生じる点が、接種すべきかどうか、国産のDPT-IPV4種混合ワクチンが出るまで待つべきかどうかというジレンマを強めているようにも思われます。

 厚労省は今年8月、「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」を開き、OPVからIPVへの円滑な切り替えの具体的方策を検討し始めましたが、やや遅きに失した感は否めません。今後、DPTワクチンやOPVの一回目接種を受けた人の取り扱い、IPVが導入された場合のOPVの取り扱い等についての検討が進められる予定だそうです。

 親が接種をためらっているうちに、OPVIPVもどちらも接種しないという選択をするのだけは避けて欲しいというのが検討会の共通した認識のようです。

 現在IPVは審査書の提出という山場を迎えているようですが、ワクチンの検定がスムーズに通って実際に接種が可能になるのは早くて来年の秋以降、一部のメーカーは24年度にずれ込むことが避けられないというのが現状です。4種DPT-IPVワクチンとは別に、IPV単独ワクチンも開発中だそうですが、こちらは更に遅れるのではないかというのが一般的な見方のようです。

 厚労省が事態を重く見て検定を早めるなどの弾力的な運用を図ってくれるようなら好都合なのですが・・・