レバ刺し禁止 秒読み

                                                               2012.6.26

厚労省は6月12日、食中毒を起こす可能性がある牛の生レバー(肝臓) を食品衛生法に基づき禁止することを決定。これにより7月1日以降、焼肉店での「レバ刺し」は食べることができなくなります。

事の発端は、昨年4月、富山、福井の焼き肉チェーン「焼き肉酒家えびす」での死者4人を含む169人の集団食中毒事件。これは腸管出血性大腸菌O111に汚染された生ユッケの喫食によって溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発した重症化例の多発によるものでした。

腸管出血性大腸菌の感染者数は年間3〜4千人で、このうちO157によるものが65%と大半を占め、O111は4%くらいにすぎなかったのですが、菌株同士の遺伝子交換などで病原性が変化してO111強毒化したのではないかと推論されています。

1996年の牛の生レバーで起きた病原性大腸菌O157食中毒事件を受け厚労省は、98年に「生食用食肉の衛生基準」を策定し、飲食店や食肉処理場に対し「レバーは他の内臓の取り扱い場所と明確に区分」、「肉の表面は専用ナイフでトリミング(削り取り)」という衛生基準を通知したのですが、店側の判断で国の基準に満たない生肉の提供が後を絶たないという、罰則規定のない基準の形骸化が指摘されていたのです。

 

今回の「レバ刺し禁止」措置は、厚労省の薬事・食品衛生審議会の分科会で決定されたものですが、「生で安全に食べる有効な対策が見いだせない」として、@牛の肝臓を生食用として販売してはならない、A牛の肝臓を使用して食品を製造、加工または調理する場合は、中心部を63度で30分間加熱する等の規格基準が定められています。

 

禁止を目前にしてこのような規制に対する賛否両論が渦巻き、「食べるか食べないかを国が規制するのはおかしい」との声が消費者や焼肉店、食品業者などから噴出、テレビなどでも「自己責任論」を振りかざすコメンテーターが続出し、「生食文化」論まで登場して百家争鳴状態。 

 

激しい下痢や血便を主訴に当院を受診し、便検査でO157陽性の子どもの大半は焼き肉や生レバーの喫食歴が認められます。

大阪市保健所感染症対策課も「ストップO157! 子どもたちに生レバーやユッケなど生の食肉を食べさせないで!」というパンフレットをこのような事件前から発行し警鐘を鳴らしてきたもので、各県の衛生研究所も国の統一見解や規制を望んでいたことは間違いないでしょう。 (大阪市ホームページ「腸管出血性大腸菌感染症−O157O26など」 
http://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000005551.html

 

日常診療の経験からは生レバーなど食べられるものではないという思いが強かったのですが、生レバー人気がこれほどすごいというのも驚きでした。

産経新聞は5月17日の記事で、さらに6月25日の「主張」欄では「レバ刺し禁止 放射線の利用なぜ考えぬ」という社説を掲載し、世界が有効性と安全性を認めている食品への「放射線照射」を食品衛生法で禁止している現実を批判しています。放射線照射は食品の内部まで均一に最近や寄生虫を殺せる手法で、その安全性についてはWHO(世界保健機関)やIAEA(国際原子力機関)も「問題ない」と評価しているというのです。

果たして、レバ刺し支持派の声が届くかどうか?