子どもにコーヒー?

2012.10.16

45年以上は小児科医を続けていますが、お母さんから一度も受けたことの無い質問の一つ、それは「子どもにコーヒーを飲ませてもいいか?」 というものです。恐らくほかの先生も似たようなものだと思います。

 飲みさしの自分の缶コーヒーを子どもに与える親を時々見かけはしますが、日常的に子どもにコーヒーを飲ませているお母さんはまずないのではないでしょうか。

 

コーヒーはなんとなくクセの強い飲み物という印象が強く、子どもに飲ませるようなものではないという感覚が古くから日本人に備わっているように思われます。恐らくカフェインが含まれているからというのがそうさせているのではないでしょうか。

確かにカフェインの血中濃度の急激な上昇は、その中枢神経刺激作用によって心拍数の増加をもたらすだけではなく、不安や興奮をもたらすことになります。また、妊婦がカフェインを過剰に摂ると低出生体重児が生まれやすいとも言われています。

 カフェインアルカロイドと呼ばれる天然成分の一種で、コーヒーのみならず緑茶などにも含まれており(湯呑み一杯でコーヒーの1/21/3量)、脳の神経に作用してリラックスを可能とし、眠気を解消し、集中力を維持するという特効や、血糖値の上昇を抑える働きも持っています。ただ、交感神経を刺激して血圧や脈拍を高める可能性など心臓循環器系への影響や気管支拡張作用も認められており、コーヒー30杯分に相当する約2c以上のカフェインを一気に取ると死に至ることもあるというのです。

 最近、このコーヒーが糖尿病などの生活習慣病やガンの予防に役立ちそうだということが分かってきました。

1日2-3杯のコーヒーを飲むと胆石になる危険性が4割少なくなり、カフェインを減らしたコーヒーではこの効果がみられなかったという米国ハーバード大学の研究も随分前に報告されています。

 

 コーヒーを飲む人に糖尿病になる人が少ないことは以前から知られていたそうですが、国立国際医療センターの野田光彦部長の研究では、コーヒーを飲む習慣が「週5回以上」の人は、「週1回未満」の人に比べて、2型糖尿病になるリスクが0.61倍と低く、その理由として、コーヒー成分のカフェインとクロロゲン酸が複合的に働いているためとも説明されています。(日経新聞)

さらに、カフェインには脂肪分解作用や、交感神経を刺激してエネルギー消費を高める働きも認められるものの、コーヒーを飲むだけでやせるのは難しいと記事は紹介、肥満予防効果については今後の研究に委ねるところが少なくないと解説しています(慶應義塾大学・石川助教授)。

更に、カフェインには心筋梗塞や脳梗塞の基となる血栓予防効果や、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを増やして動脈硬化を予防する働き肝臓ガンの予防効果も認められることが分かってきたそうです。

 

 コーヒーに含まれる有効成分で主なものはカフェインとクロロゲン酸類です。クロロゲン酸は、緑茶に含まれるカテキンや赤ワインのアントシアニンなどと同じポリフェノールに属しており、その抗酸化作用が注目されています(1杯で200300mg)。

御茶ノ水女子大学グループによる非喫煙女性を対象にした調査では、コーヒーを1日に2杯以上飲む人は、紫外線によるシミが少なくなるという研究成果が確認されているそうです(10月6日、日経新聞)。

 一方、東京慈恵医科大学の鈴木教授グループによる実験では、コーヒーを飲んで運動すると通常よりもエネルギー消費量が増え、それが5時間も持続したこと、そして肥満・糖尿病モデルラットを用いた研究でも、カフェインと運動の併用によって体重と脂肪の減少効果が最大になるという事実が証明されています(同、日経)

 

  このようにコーヒーには、抗炎症作用や生活習慣病を予防する効能があることは明らかにされてはいますが、それはあくまでも成人の話、子どもに飲ませていいかどうかはまた別で、もっと十分な検証が必要となるでしょう。