黄砂襲来! 砂漠化と日本の責任

2013.3.26  

                   

 黄砂 の問題については20091年の3月26日にも書きました。

(「霞か雲か」 中国からのとんでもない贈り物 : 下記参照)

 

中国内陸部やモンゴルの砂漠や乾燥地帯の黄砂が、偏西風によって日本に運ばれ地上に降り注ぎ、あたり一面がかすんでしまうのが「黄砂現象」です。

視程が悪くなり霞(かすみ)か靄(もや)がかかったようになった状態が連日続くため、喘息などで受診される患者さんからは黄砂やPM2.5が原因なのでしょうかと質問されることが日常茶飯事となりました。

霞や靄は空中に漂う水滴によって視界が悪くなる現象だそうで、平安時代から春の風物詩として愛でられてきたものです。当時でも黄砂は飛んで来ていた筈ですから、これが霞と混同されていたのだとしたら、都の霞もそれほど風情のあるものとも言えなくなります。

黄砂現象が年々ひどくなる背景には、モンゴルや中国北部の内モンゴル自治区の草原の砂漠化拡大が働いているようです。砂漠化が進むのは温暖化や干ばつ、鉱山開発などの影響もあるでしょうが、草原が縮小〜消滅し砂漠化するのにはカシミヤヤギ犯人説(過放牧)が問題視されています。

カシミヤといえば今も昔も高級素材として有名で「繊維の宝石」と呼ばれ、越冬時に生える産毛から一頭で250cほどしか採れないという希少品。中国の内モンゴル自治区の世界シェアは約50%で、最高級カシミヤは内モンゴル産。カシミヤセーターは英国王室やベッカム御用達の「プリングル製」と相場は決まっていたのですが、今や世界のユニクロまでもが大々的に売り出してまさに普及の極み、誰もが利用できる大衆品と仮したのです。世界全体の6割は日本で消費されるというくらい日本人はカシミヤ好きで知られています。

カシミヤの需要が高まるのに伴い、モンゴルでは、羊の毛皮より高いという理由でヤギの飼育が進み、ヤギ飼育者の年収は給与生活者らの510倍以上という豊かさを生んだのです。ヤギはほかの動物よりも動きが敏捷でわずかな草まで探し出して食べ尽くすのだそうです。しかも、葉だけ食べる羊やラクダと違い、ヤギは根茎まで根こそぎ食べてしまうために黄土が露出して土が飛散するだけではなく、翌年に新芽までが芽吹かぬ状態を生んで砂漠化が進む構図となるのだそうです。

このカシミヤ消費量の多いわが国が、モンゴルや中国の砂漠化はあずかり知らぬこと、飛来する黄砂は迷惑千万と白を切ることが果たしてできるのか? 極めて疑問と言わざるを得ないのです。

モンゴル政府は砂漠化阻止のため、砂漠化対策国家委員会などを組織したり、「Green Wall」というプロジェクトを立ち上げましたが、砂漠化の背景に世界的なカシミヤ需要の膨張という人為的な要因があるだけに、モンゴル一国では対応できない複雑な問題を内包しています。

日本の独立行政法人「緑資源機構」もモンゴル政府と協力してヤギ放牧管理ルールつくりに取り組んでおり、そのほかにも緑化活動に日本人のボランティアが大勢おられることがせめてもの罪滅ぼしといえそうです。

 


 

 霞(かすみ) か 雲か

                                        中国からのとんでもない贈り物     2009.3.26

山のすそ野が、雲のように白く横に「霞棚引く(たなびく)」さまは、わが国独特の春の風情と言えますが、最近は、天といわず地といわず、あたり一面が白くかすんで視界不良、すっきりしない空模様が続いています。

言わずと知れた「黄砂(こうさ)」の到来です。

寒さで砂が乾燥し、強い風が吹く3〜5月が黄砂の最盛期になり、洗濯物が汚れるは、自動車のフロントガラスに白い斑点ができるはで、迷惑この上なきありさまです。

黄砂は、中国内陸部やモンゴルなど東アジアの砂漠や乾燥地帯の黄土(表層の細かい砂塵)が、強風で大気中に舞い上げられ、季節風や偏西風に乗って遠く日本やアメリカにまで運ばれ、地上に降り注ぐものです。

あたり一帯がぼうっと見通しが悪く、視程が10km以下になって霞(かすみ)か霧(きり)がかかったように見える状態を、「黄砂現象」と呼んでいます。

日本に到達する頃には大気中の濃度が100μg/m3程度となって、曇り空なのかどうか見分けがつかなくなることも少なくありません。

問題は、この黄砂が増加傾向にあることです。

年間を通じた黄砂の観測日数は、過去20年の平均日数が約29日、それが00年には49日、01年に48日、02年には55日を記録、一時は減少に転じたものの、05年には43日、06年には42日と再び増え始めています。

環境省では07年から、全国9ヵ所の観測量をインターネットで常時公開するシステムの運用を始めています。

黄砂は花粉症や喘息などを悪化させる要因ともなっています。

暖冬の年は飛散量が多くなる傾向がみられますが、長期にみた場合、地球が寒冷期にあるときは乾燥化による黄砂の増加が、また温暖期には湿潤化が進んで黄砂は減少してきたのではないかと推定されてきました。

本場中国。黄砂の通り道の北京や天津では大問題になっていても、全国的には一種の季節風のようにみられていて、問題視されることは少なかったようです。ところが、9年前から、はるか南方の上海でも黄砂が確認されるようになり、それも「重度汚染」を示す日が増え始めたというのです。

重度汚染というのは、空気中に浮遊する砂や汚染物質の量が多く、視界の問題にとどまらず、呼吸器疾患や肺損傷などの健康被害を引き起こすために外出禁止が勧告される状態を指します。

ではなぜ「黄砂」の量が増えてきているのでしょうか?

近年の急速な経済発展、工業化、人口の都市集中、過剰な放牧などによる「耕地の減少や荒廃」、「砂漠化した草原」などが大きく作用しているのではないかと考えられています。温暖化による異常気象の影響で低気圧の進路が変わって、日本に到達しやすくなっているのではという意見もみられます。

われわれ日本人は、土地の劣化を中国の国内問題と考えがちですが、果たしてそうでしょうか?

中国の耕地は、都市近郊農地の工場や住宅地への転用により年7%ずつ減少しているといわれていますが、原因はそれだけではなく、中国やモンゴルにおけるヤギなどの過放牧も一因となっていると言われています。

世界的なカシミヤ需要の増大がヤギの数の増加をもたらし、動きの過敏なヤギが草原を食べ尽して砂漠化してしまうという構図も見逃せません。

内モンゴルなどの草原は遊牧禁止にして農耕地に転用されているようですが、地層の関係から2、3年で砂漠化してしまうことも珍しくはないようです。わが国は大量の野菜類を中国から輸入していますが、耕作に使う水の大量消費とともに、間接的に砂漠化にからんでいるとは言えないでしょうか。

ただ黄砂には、このような負の面だけではなく、海洋に落下した黄砂が、海の微生物に必要な栄養塩やミネラル、鉄などを運び込む役目をしているのではないかというプラスの見方があることも事実です。

さらに、CO2が海に吸収される際に海洋プランクトンがかかわっているところから、黄砂が、海の微生物などの生態系に影響を与えている可能性から、CO2濃度変化にも関与しているのではないかという推論も成り立つようです。

しかし、中国大陸方面から飛来するのはなにも黄砂だけではありません。

日本上空に流れ込んでくるエーロゾル(浮遊粉じん)と呼ばれる微小な大気汚染物質には、工場のばい煙、自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などが含まれており、時には黄砂に付着して飛来して、酸性雨の原因になったりもします。

経済発展を続ける中国では、エネルギー消費量が90年から03年までに1.5倍以上に増加し、それと平行して大気汚染も進んでしまったのです。

経済協力開発機構(OECD)は、07年に報告書「中国の環境パフォーマンスレビュー」をまとめ「一部の都市の大気環境は世界最悪の部類に入る」と指摘、人の健康への大きな脅威となる懸念を公表しました。

わが国でも90年代以降、光化学スモッグの原因とみなされる化学物質の濃度が高まりつつありますが 、中国の大気汚染の悪化が日本の悪化の主原因と推定されています。

このように経済成長と環境保持は相容れない一面をもっており、豊かさを求める中で、いかに環境と折り合いをつけていくのかが今後の大きな課題として残るでしょう。