エボラ出血熱 対策の限界と問題点

侵入は 検疫・水際対策の強化で防げるのでしょうか?

2014.11.18 

  117日、東京と大阪で「エボラ出血熱の疑い」のある患者が相次いで確認され、国内は騒然となりました。

 東京例はリベリア滞在歴のある町田市の60代男性、大阪は関西空港から入国したギニア国籍の20代女性です。エボラ感染の疑いもあるとのことで直ちに隔離措置がとられましたが、検査結果はいずれもエボラウイルス陰性と出て事なきを得ました。

 東京の男性は羽田空港到着時には無症状で、そのまま帰宅した2日後に38.9℃の熱発をきたし一般の医療機関を受診し、渡航歴の確認もなされなかったため、騒ぎがいっそう大きくなったのです。

 エボラ出血熱は潜伏期が最長3週間もあるため、到着時に症状がなくとも発病寸前という場合もあるわけで、水際対策をすり抜けてしまうという限界があるのは仕方がないことなのでしょうか。

 入国時、流行国の西アフリカ諸国での滞在歴を隠さず申告することは当然のことですが、渡航歴のある人は3週間にわたって朝・夕2回の体温を検疫所に連絡する義務や、発熱などの症状が出た場合も一般医療機関を受診することなく自宅に待機し、検疫所に連絡するように決められています。にもかかわらず、今回のケースのように十分には守られていないのが実情です。

 このように「経過観察」の対象となる人は2日に1人のペースで発生」しているそうですから、致死率7割の感染症が日本に入ってくる可能性はゼロではないと言えましょう。 

 国連・エボラ緊急対策ミッションが公表しているように「拡大を阻止できなければ、前例のない事態に直面する」ことになるわけで、感染者が入国し本人も気づかぬまま多くの人に接触するようなことがあれば、エボラが流行する可能性がないとは言えないのです。

 ここで問題になるのは「検疫」や迅速な初動検査の徹底、医療体制の確保などによる二次感染の防止が不可欠ですが、「検疫」による水際対策には上記のような理由から限界があるものと考えておく必要がありそうです。

 14世紀にペスト(黒死病)がヨーロッパで大流行した時には、全欧の死者は約2500万人に達し、1400年までに全世界で約1億人が死亡したと言われています。

 その対策として、ベニスではペスト患者や疑わしい人が乗船中の船舶の入港を禁止し(1348)、ラグサではエジプトやレバントからの船の入港は30日間待機(1377)(後に40に隔離期間を延長)、マルセイユ港でも40日間の停泊措置を打ち出して(1383)、上陸を禁止したうえで流行の蔓延防止に当たったと言われています。

国内に常在しない感染症が国外から侵入するのを防ぐために、空港や港などで、入国者や輸入品について診察や検査、隔離などの措置を講ずることを検疫と呼び、エボラ出血熱を含め、ペスト、ラッサ熱などが「検疫法」に基づく「検疫感染症」に指定されています。

この「検疫Quarantineという言葉は、40日間の強制隔離にちなみ、イタリア語で40を意味する「Quaranta」を語源としているのだそうです。

海外で発生したインフルエンザの国内侵入を食い止めることは極めて困難で成功例はないとされており、検疫強化は感染拡大時期を遅らせる効果はみられるものの、有効性は科学的に明らかではないと考えられています。

09年の新型インフルエンザの流行時にも水際作戦と称して、成田空港からの入国者を一定期間留め置いた前例もなくはないのですが、その妥当性については疑問の残るところです。

エボラ出血熱でも不顕性感染があるのかどうかは明らかになっていませんが、潜伏期間中の患者や不顕性感染者を事前に発見することは先ず不可能と言っていいでしょう。

エボラ出血熱の水際対策として、流行国からの渡航者はごく限られた人数であるゆえ、感染の疑いが晴れるまで一定期間しかるべき施設に留め置いて監視する必要があるのではないか、まさに検疫の強化という過激な意見を主張する方もおられるようです。

政府は、エボラ出血熱の感染が疑われる事例が発生した際、その人が搭乗した航空機の便名や乗客数、滞在国などの情報を開示する方針の検討に入り(1031)、エボラ出血熱や新型インフルエンザなど国民の健康に重大な影響を与える恐れのある感染症を対象にして改正感染症法を可決、患者から強制的に血液などの検体を採取することを認めることになりました(1014)

エボラ出血熱の国内侵入がありうるかどうかはともかくとして、防疫と人権のはざ間で苦悩する日々がしばらくは続きそうです。