アニサキスの功と罪

2015.3.17

 線虫を利用してガンを早期発見する手法については、本欄217日の「あとは神頼み?」で既に紹介しました。312日には各メディアで取り上げられて話 題になっているようです。

 九州大学と伊万里有田共立病院などの研究チームは、C・エレガンスという種類の線虫を実験動物に選んで検証した結果、ガンの種類や進行度にかかわらず95.8%の的中率でガンか否かを判別することができたといいます。血液の腫瘍マーカー検査ですら16.225%といいますから、驚異的な精度と言えるでしょう。

この発見、「線虫ががん患者の尿に反応して寄り付く習性」の発見は、偶然のたまものだと云うのです。「アニサキス症」と診断された患者の胃内視鏡によるアニサキス除去術の際に、偶然見つかった未発見の胃ガン病巣にアニサキスが食いついている像が見つかり、アニサキスはガン細胞に集まる性質を持っているのではないかという印象を持った術者のひらめきがヒントになったそうです。

 何よりも一検体100円程度で検査できるようにはなるそうで、研究チームは10年程度での実用化を目指しているそうです。線虫の疾患選別特異性を向上させれば、どういう種類のガンかを判別することも可能になる日がくるのではないかと期待されているようです。

「アニサキス」は回虫や蟯虫同様、「線虫」の仲間でその幼虫は体長2035_mでサバやイカ、アジなど160種あまりの海産魚介類の内臓や筋肉内に寄生しているのだそうです。

これらの生食によって、アニサキスは人の胃や腸に入り、生食3〜5時間後に強い腹部の激痛や下痢、時には蕁麻疹様の発疹を来すもの(劇症型)ですが、全例必ずしもこのような経過をとるとは限らず、中には無症状の人や、軽い腹痛程度ですむもの(軽症型)などに分類されています。

アニサキス症の好発時期は123月の寒期で、「冬の食中毒」の一つに挙げられています。1999年の食品衛生法施行規則の改正で食中毒原因物質とし例示され、発生時には最寄りの保健所に24時間以内に届け出ることになっています。

 加熱(60℃で1分以上)するか冷凍処理(20℃以下で24時間以上)することによりアニサキスは死滅しますが、刺身やしめ鯖のような生食は危険で、サバを調理している人によると日常頻繁に見かけるのだそうで、事実、東京都健康安全センターの調査では70%以上のマサバからアニサキスの幼虫が検出されたと報告しています。20回くらい噛み砕いてから食べるか、イカは糸作りにして食べるのが無難なようです。

 話は変わりますが、「サバの生き腐れ」という言葉が象徴するように、サバを食べると蕁麻疹やおう吐、下痢を引き起こすことがあり「サバアレルギー」によるものではないかと考えられています。

実際、加工食品にサバが含まれている場合、その事実を記載するよう奨励されている厚労省の「特定原材料に準ずるもの」扱いになっています。

サバを食べてアレルギー症状を起こすのは、サバのたんぱく質に対して起こった免疫反応の結果(真性アレルギー)ではなく、元々魚肉に含まれる遊離ヒスチジンという物質が細菌などの作用でヒスタミンに転換され、この既に魚肉内に存在していたヒスタミンによって蕁麻疹などが起こる「仮性アレルギー」によるものが大半なのではないかと考えられています。

従って、鮮度の落ちたサバほどヒスタミン量が多いため、「サバに当たる」率も高くなるということになります。ヒスタミンは加熱しても影響をうけないので焼き魚にしても結果は同じで、サバを食べる時はヒスタミン量の少ない鮮度の高いものを選んで食べることが大切だと考えられています。

しかし一方、最近ではサバによるアレルギーの大半は先に述べたサバに寄生した「アニサキスによるもの」ではないかと考えられるようになってきたのです。昭和大学の研究でも、サバアレルギーを起こした人のサバ特異抗体は4%であるのに対し、アニサキス特異抗体は3040に上ったことから、アニサキスによるアレルギーが主犯ではないかと考えられるようになったのです。

線虫アニサキスの功罪、なんとも言い難しというのが結論です。