麻疹(はしか)は駆逐できるでしょうか?

予防接種の意外な展開 と はしか排除(Elimination)の危機

2015.3.24

 はしか(麻疹)の流行といっても幸いにして日本の話ではありません。

カリフォルニア州のディズニーランドが発生源とみられる「はしか」感染が急増、観光客が集まる場所だけに全土に拡散し、CDC(米疾病対策センター)によると220日までに17州で計154人の感染者が出たというのです(228日、毎日新聞「米で拡大 はしか」)

この感染拡大の背景には、子供へのワクチン接種を拒否」する親が増えているという事実があり、そのような動きを助長するような「反ワクチン運動」が糸を引いているという構図が問題だと解説されています。

記事はさらに、宗教的理由での拒否や、「はしかワクチンで自閉症になる」という1998年に英国で発表された論文の影響についても言及していますが、ワクチンと自閉症の関連性はその後に否定されており、今では根拠のない考え方ということになっています。

米国では「反ワクチン運動」が台頭し、「予防接種は自然に反し、子供たちには感染症にかかる権利がある」と主張する医師や、「親には子供にワクチンを受けさせないという一定の選択権がある」と発言する議員が出現したりし、次期大統領指名レースがらみで混乱に陥っているというのです。

これらは、わが国でも一昔前によく聞いたセリフですが、さすがに最近は耳にする機会が減った説だけに、2000年に麻疹制圧宣言を出した米国での出来事となると意外な気もします。

最近米国で流行する麻疹はほとんどが輸入例、かつては日本から持ち込まれたものが最多ということで、わが国は「麻疹輸出国」、「ワクチン後進国」の烙印を押されて、汚名返上に四苦八苦した苦い過去(?)もありました。

昨年には、東南アジアにおける麻疹の流行があり、かの地で感染して帰国後に発症する事例が急増するという出来事もあり、ウイルスの遺伝子型が従来から日本にあったタイプではなくすべて海外で流行している型であったということで、わが国は輸出国から輸入国へと様変わりした感もあったのです。

JICA(国際協力機構)が中心となって感染症封じ込め対策が進められているとはいえ、グローバル化が進む現代においては航空機などによって移動が瞬時に行われるため、なかなか対応が追い付かないのが現状です。

西アフリカでの流行がパニックを起こした「エボラ出血熱」ですが、WHO(世界保健機関)128日に「終息期に移った」という見解を発表しています。流行開始から約1年、2万人以上が感染し、死亡者9千人余りという今回の流行も終息に近づいたということです。

エボラと麻疹はもちろん関係のない感染症ですが、麻疹などのワクチンで予防できる感染症のリスクにさらされている小児は数十万人に上るというのです。

流行国や地域では多くの医療機関が閉鎖されていたり、エボラ感染を恐れて病院に行くのをためらう人が多いため、受診や予防接種に訪れる人の足が遠のいているのだそうです。このため、麻疹にかかる恐れのある生後9ヶ月から5歳の小児は、西アフリカ諸国の医療システムの麻痺が1カ月延長するごとに2万人も増加しており、もし同地区で大規模な麻疹流行が発生すれば、エボラ流行前に比べて患者数は約2倍になるといいます。

ことは麻疹に限らず、ポリオや肺炎球菌など他のワクチン接種にも及び、これらのワクチン接種を受けていない小児の数は6070万人になると推計されているのだそうです(Science.313日号)。