デング熱の悪夢 再び?

2015.5.19 

蚊が飛び交う季節が近づきました。暑さがつのると昨年夏のデング熱騒ぎがよみがえります。

デング熱は、2010年に初めて200例以上の輸入症例が確認されたのを手始めに、2013年には249例、昨年8月には69年ぶりに国内発生が報告され、公園を訪れた人たちが次々と感染して発生元の代々木公園はそれこそ蜂の巣をつついたような騒ぎとなりました。海外渡航歴のない国内デング熱症例が162にも達したのは記憶に新しい出来事です。

今回のデングウイルスはT型2014年に熱海市で発生した症例は同じT型でも代々木公園起源のT型とは遺伝子配列が異なっていることや、2013年夏に日本旅行から帰国後にデング熱を発症したドイツ人女性のウイルス株はU型ということで、2年間に少なくとも3種類のデングウイルスが日本に侵入していたことになります。

古くは1942年から1945年にかけて西日本中心に流行したデング熱ですが、その原因ウイルス株も昨年の国内症例と同じデングウイルスT型であることが分かっています。デング熱は世界的には熱帯・亜熱帯地域を中心に、毎年3億9千万人が感染しているものと推定されています。

臨床試験段階のデング熱ワクチンは、黄熱生ワクチンをベースにしたキメラワクチンCYD-TDVと、キメラワクチンDENVaxが候補に挙っています。

ワクチンの実用化が先の話となると、感染防御は蚊にさされないことに尽きますが、厚労省は感染症法に基づき、蚊が媒介する感染症の予防対策指針を策定し、新設された専門委員会では、感染拡大を防ぐための蚊の駆除法や発生を抑える方法についても具体的な内容の検討を進めることにしています。

  今までは日本に縁もないと思われていた珍しい感染症が、経済のグローバル化、外国との交流の増加や交通発達により瞬時に国内に侵入してくるという時代を迎え、わが国の感染症対策は新たな段階に入ったと言えるでしょう。

 感染症に限らず、荷物などに紛れて入り込む攻撃的な外来種のハチやクモなどの被害も拡がっており、環境省は今年3月に、特定外来種 (2005年施行の「外

来生物法」で指定) を含む429種の外来種を「生態系被害防止外来種リスト」にまとめ、対策の方向性を公表しています。

 危険性の高い感染症の対策専門家が足りないことは、昨年のエボラ出血熱騒ぎで露呈した現実です。その反省に立って、厚労省は4月に「感染症危機管理専門家」を2年間の養成プログラムのもとに育成し、海外で重大な感染症が発生した際に派遣すると発表しました。

海外での感染症対策が国内侵入のリスクを下げることにもつながるため、知識や経験を積んだ専門家の養成・海外派遣が急務ということなのです。

WHO(世界保健機構)は地球温暖化でデング熱が広がりかねないと警告を発し、国連のCOP12(生物多様性条約第12回締約国会議)も、侵略的外来種に関する情報の共有や侵入経路の特定に関する国際的な連携を図る方針を決めています。