一難去ってまた一難

ポリオは消えたのに エンテロウイルスD-68型感染症流行

2015.10.30

 例年より早目のインフルエンザ流行が余り報道されなくなった矢先、ここ数日は「エンテロウイルスD-68型」感染症のニュースで持ち切りです。

 発熱、咳、気管支炎、喘息様症状などを呈し、時には急性呼吸不全にいたった児童の一部から分離されたウイルスが、エンテロウイルスD-68(EV-D68) と同定され、ポリオ様の急性弛緩性マヒを伴うこともある原因不明の症例として報告されています。

 EV-D681962年に米国カリフォルニア州の肺炎患者から初めて分離されたウイルスで、気管支炎や肺炎の比較的稀な原因ウイルスとみられていたのですが、

昨年米国で1000名を超える大流行が発生、中には呼吸器疾患が重症化することが知られるようになったのです(うち14名が死亡)

 2012年には、脊髄炎を伴うマヒを発症した23名の小児患者中の2名からEV-D68が検出されたことから、このウイルスとマヒとの因果関係が疑われるようになったようです。

 わが国でも2005年あたりから毎年数例の報告がなされていますが、2010年と2013年には中規模の流行があり約100例余りの症例が報告されています。

 日本での今回の流行では、全国20の都道府県の子供47人にマヒ症状が見られ、うち2人からEV-D68が検出されたため、国立感染症研究所は詳細把握の全国調査に乗り出しました。

 日本小児科学会も「急性弛緩性麻痺/急性弛緩性脊髄炎ならびに喘息様症状を認める急性呼吸不全例の多発について」と題し会員の注意を喚起するとともに、患者さんの症状・所見・治療方法・予後などを含めた臨床・疫学情報に併せ、血液などの臨床検体の確保を呼びかけたのです。

 弛緩性麻痺とは聞きなれない名前でしょうが、その代表がポリオウイルスの感染で起こる「ポリオ」(poliomyelitis 急性灰白髄炎)で、ポリオ様疾患はポリオウイルス以外のエンテロウイルスによっても発症する事が知られており、EV-D68はその一つということができます。

 ポリオウイルスに感染しても多くの人はカゼか胃腸炎のような症状が出るだけで、弛緩性麻痺を呈するのは1パーセント以下と考えられています。

 ポリオは1988年のWHO総会において2000年までの根絶が決議されたのですが、残念ながら、2012年現在ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン3国には常在しているため、この3国やその周辺国に渡航する時にはポリオワクチン接種を完遂しておく必要があります。

 わが国では、ワクチン接種の推進によって1960年代初頭の大流行以降、流行は起こっておらず、日本を含む西太平洋地域では2000年に根絶宣言が出されています。