カゼに薬 ?

カゼは自然に治るモノ ?

2016.3.1

 カゼは自然に治るもので、風邪薬を飲んだからといって早く治るものではないという類の噺を最近よく目にするようになってきました。

 たいていの総合感冒薬には、鼻水抑えのクロルフェニラミンマレイン(抗ヒスタミン剤)やクレマスチンフマル酸、無水カフェイン(眠気防止)サルチルアミドやアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)、ジヒドロコデインリン酸塩(咳止め)などの成分が含まれていますが、これらは症状の一時的な軽減をもたらすことはあってもカゼを早く治す薬ではないというものです。

FDA(米国食品医薬品局)2008年、4歳未満の小児に市販の咳止め薬やカゼ薬を与えないよう勧告、米国小児科学会(AAP)も、処方なしに入手できる市販薬は乳幼児に重篤な副作用を引き起こす可能性があるともいっています。

さらに、カゼの多くはウイルスによるもので抗生物質をのむことは無意味なばかりか耐性菌を生み出しかねず、害の方が多いのではないかといった意見にも耳を貸すことが大切でしょう。

世の中には、患者さんにも医者自身にも抗生物質信仰に近いものがあって、カゼには抗生物質という方程式が忘れられないのかもしれません。

使用の多寡はともかくとして、複数の抗生物質が効かない「多剤耐性菌」は世界で猛威を振るっており、CDC (米疾病対策センター)の推計では米国では年間200万人の耐性菌感染者があり、そのうち死者は2万3千人に上るというのです。

耐性菌の出現は医療での抗生物質乱用に起因する部分が少なくないのですが、養魚場や畜産現場において病気予防の目的で使用される大量の抗生物質の責任も大きいという説も見逃すわけにはいきません。

いずれにしろ、新薬が開発されても乱用によりすぐ耐性菌が出現して薬が効かなくなるというイタチごっこが繰り返されており、WHO抗生物質の処方を最小限に抑えるよう医療従事者に勧告しています。

このままでは製薬会社の研究・開発意欲も削がれて、新規の抗生物質はもう世に出ないのではないかとも言われています。

英国の調査チームが平成26年の暮れに公表したように、耐性菌による年間死者は、現在の70万人が2050年には約14倍以上の年間1千万人に上るとの予測もあり、WHO(世界保健機関)も警告を出して対策強化に乗り出しました。

WHOは耐性菌の拡大に警鐘を鳴らすばかりではなく、各国に早急な対策を求める決議を平成265月の総会で採択、昨年5月の総会でも耐性菌対策に関する行動計画策定に向けた議論が行われています。