「出産直後の抱っこに注意」

 脳性マヒ招くケースもあり、日本医療機能評価機構が警告

2016.8.30


 この刺激的な警告は、827日の日経新聞に掲載された記事の標題です。

公益財団法人日本医療機能評価機構では、出産事故で子供が重い脳性マヒになった際に「産科医療補償制度」を適用して一時金などの補償を行うとともに、事故原因の分析を通じて再発防止策を提言するなどの事業を運用しています。

今回、出産直後のベッドで母親が赤ちゃんを抱く「早期母子接触」の間に赤ちゃんの容態が急変し、時に脳性マヒにまで至った昨年末までの793件の原因分析結果を踏まえ、@十分な説明、A母親の理解と納得を軸に、「妊産婦用」と「産科医療関係者用」の2種類のリーフレットを作成した提言になっています。

「早期母子接触」は必ずしも「カンガルーケア」と同義語ではないものの、「カンガルーケアの最中に赤ちゃんの容態が急変し脳性マヒを残すなどの深刻な事態に」といったニュースがしばしば報じられ、また一部では訴訟沙汰になって世間の注目を浴びているという背景があります。

保育器などの産科医療器具に乏しい南米コロンビアで始められたというカンガルーケアですが、母親の肌に密着して保温効果が上がる、直接抱かれる安らぎ、愛着行動の増加や育児に対する自信の醸成など母親側のメリット、母乳保育への積極性から完全母乳栄養率が高まる等の諸点が評価されているようです。

このような利点に対して、カンガルーケア中に呼吸停止を来し、時には死亡するケースが報告され、これに批判的な意見をもつ人もなくはないのです。

もともと出産という行為自体がリスキーなもので、新生児の呼吸・循環器系の不安定さ、さらに分娩室の室温管理の不十分さや人材不足といった要因が加わって、新生児が寒冷刺激にさらされたり、栄養不足から低血糖症に陥ったりしているのに気づかず事故につながるという危険性は避けられないのでしょう。

このような状況から、日本医療機能評価機構は再発防止ワーキンググループを組織して、脳性麻痺発症の原因や再発防止に関する症例対象研究に乗り出したものです。このリーフレットにはカンガルーケアという語彙は出て来ませんが、カンガルーケアという言葉自体が混用されかねないからでしょう。

リーフレットでは、@赤ちゃんの顔が母親からよく見える位置で実施する、A母親の上体を30度前後まで起こすB赤ちゃんの顔を横に向けるC眠くなったり自分の体調に不安がある時の相談、などの注意が必要と解説されています。