「受動喫煙」厚労省案 宙ぶらりん

5/31「 世界禁煙デー」 五輪の受動喫煙対策はいかに?

2017.6.13

 

 2020年の東京オリンピックを控え、受動喫煙を巡る攻防が激しさを増しています。

 受動喫煙対策を強化する「健康増進法改正」に関し、厚労省案を厳しすぎるとして自民党が「認めない」方針を固めた結果、受動喫煙対策はさらに後退を余儀なくされることになりました(4月14日、毎日新聞)

 厚労省は当初、飲食店をすべて原則禁煙とする方針でしたが、飲食業界などの反対に遇い、小規模なバーやスナックなどについては例外として喫煙を容認したものの、それでも「飲食店が廃業に追い込まれかねない」とする自民党内の異論に抗しきれず、見直しを迫られる結果となったのです。

 この法改正に反対しているのは衆参約280人の議員で構成している「自民党たばこ議連」で、さらにJTなどのタバコ関連企業や飲食業の団体など、改正案に反対の団体は1167168人の署名が集まったと息巻いています(4.26、毎日)

 厚労省と自民党の対立は、例外的に喫煙を認める飲食店の線引きをめぐるも、ので、自民党は、「例外を厨房を含め150平方bまで」広げ、店頭に「喫煙」「分煙」と表示した上で未成年者の立ち入りを禁止するなどすれば喫煙可とする対案を、厚労省は激変緩和措置を設けて、その後はスナックやバーは規制対象外とする妥協案を示したのですが折り合いはつかず、健康増進法改正案は今国会での成立が見送られる結果となったのです。

 2004年以降の五輪開催都市(カナダ、英国、ロシア、ブラジル)はすべて「罰則付きの受動喫煙防止策」を導入し、法律や条例で「屋内禁煙」を定めています。

 WHO(世界保健機関)の調査では、188ヵ国中49ヵ国が飲食店やバーを含め屋内全面禁煙としているとして、厚労省を訪れたWHO幹部も「例外のない完全禁煙」を強く要請しています。

WHOは、FCTC(たばこ規制枠組み条約)の指針として屋内全面禁煙を求めており、受動喫煙対策を4段階に分けての評価では、現在の日本は最下位グループに属すことになるのだそうで(4.24、毎日)受動喫煙対策に関しては、わが国は寛容すぎる後進国と言えるでしょう。

ちなみに、最優秀のランクは英国、ロシア、ブラジルなど49ヵ国で、「病院」「小中高」「大学」「官公庁」のみならず「公共交通機関」「職場」「飲食店」「バー」など多くの人が集まる8種類の場所での屋内全面禁煙が求められており、わが国では、たとえ「健康増進法改正」が通って屋内全面禁煙義務になったとしても、1ランク上がるくらいで、世界の常識からは

程遠いのです。

 飲食店などでは、禁煙を徹底することによって客が減ることを懸念しているようですが、筆者のような非喫煙者はタバコ臭い店を敬遠することになるので、禁煙の厳格化によって一部の喫煙者の足は遠のくかもしれませんが、非喫煙者の来店が増えて相殺される可能性も高いので、それほどの影響はないとも見られます。いろいろな検証やシミュレーションでも、禁煙の厳格化は客足に影響しないだろうという調査結果が少なくないようです。

 小中高生を対象にした薬物や喫煙、飲酒に対する意識調査では、「将来タバコを吸うと思う」と答えた児童・生徒が小5〜高3の全学年で6年前の前回調査から大幅に減少し、男子で9%以下、女子では4%未満と、2回連続で減り、近年の若者のタバコ離れが顕著なことが分かります(25.8.19、日経夕刊)。この先、近い将来に喫煙者は少数派となり、喫煙に寛容な店はシッペ返しを食らうことになるでしょう。社会の流れを読むことの大切さに期待したいと思います。

 乳児期に受動喫煙があった子供は成長後に肥満になる割合が高く、この両者に一定の関連性があることを今年3月、厚労省調査が公表。また、低所得者は喫煙率が高い傾向にあって、食事の栄養バランスにも偏りがあるという別の厚労省調査の調査結果もみられ、有意の関係をうかがわせています(3.29、日経)

 厚労省の研究班は、2014年度に喫煙が原因で余計にかかった医療費は約1兆4900億円で、国民医療費の4%近くを占め、患者数は100万人、入院を余儀なくされたりして働けなくなることによる損失額は約2500億円に上るという推計をまとめています。この報告書では、受動喫煙で24万人が発病し、年間1万5千人が死亡、3232億円の医療費が必要になっているとしています。

WHO (世界保健機関)は今年1月に、タバコが世界経済に与える影響に関する報告書の中で、健康被害への医療費などで年間1兆j(116兆円)以上の損失を与えているとして、タバコへの課税強化などの対策を求めています。

タバコ1箱に約0.8jを増税した場合、世界全体で1400億jの増税効果が見込め、成人の喫煙者も最大で6600万人減るとの試算を示しています。

WHOは5月30日、喫煙による死者は世界で年間700万人以上に達し、その8割以上が低・中所得国に集中しているとも発表しています。

 喫煙が健康被害をもたらすことに疑いの余地はなく、喫煙関連の医療費は1人当たり約56jを上回って家計や各国の財政に大きな負担を強いるばかりか、喫煙が貧困を生む原因になっているとWHOは警告しています。