イチョウ ギンナン(銀杏)中毒

 

毎年、御堂筋のイチョウ並木がまっ黄色に染まると、つくづく秋の深まりを感じます。

この季節、街は秋色と、決して(かぐわ)しいとはいえぬ臭気に包まれることになります。犯人はたわわに実るギンナンなのですが、ギンナンはイチョウ Ginkgoの雌木にしか実らず、雄木にできることはありません。ただ近くに雄木がなければ、雌木だけでも実はならないのです。

私もギンナンが大好きで、大風の吹いた翌朝なぞは気もそぞろということになります。なにしろ今の都会において、落ちているもので食べることができるのはギンナンくらいしかないのですから。

しかしこのギンナンヒフのかぶれや、幼児が食べるとケイレンを起こすこともあるという くせ者なのです。

イチョウの仲間は約4億年前に地球上に現れて、現代まで生き永らえてきました。その生命力から、イチョウに宿る不思議な力を感じたとしてももっともなことでしょう。

 このイチョウの実「ギンナン」は、シブ皮も含め、たんぱく質やアミノ酸に富んだ栄養価の高い食品で、古来より漢方薬として用いられてきましたが、滋養強壮、咳止め・喘息薬、頻尿治療などの薬効が認められています。

 最近、ギンナンではなくイチョウの葉の方に、血管拡張作用や、脳血流を改善する効果があることが分かってからは、市販の「イチョウ葉エキス」がサプリメントとして大人気になっているようです。

イチョウの葉には血流改善効果のみならず、血栓形成の防止、アレルギー抑制、活性酸素の除去などの効果も確認されており、痴呆予防や、記憶力減退の改善にも使用されています。

イチョウやギンナンに含まれているギンコライドには、ギンコール酸をはじめ主に4種類の成分が含まれていることが分かっており、これらの有効成分が薬効を発揮しているものと考えられています。

 イチョウの青葉の分析からは20種以上のフラボノイドなどがみつけられており、フランスやドイツでは1970年代から脳血流改善剤として用いられてきていますが、わが国では医薬品としては認められず、健康食品扱いになっています。

 幼児がこのギンナンを食べたところ、急に手足が突っ張ったり、ケイレンを起こしたりという事故が相次いで報告されており、過去に30数人が命を落としているそうです。

 ギンナンが中毒を起こすことは、江戸時代から知られていました。

ケイレンが、4-O-メチルピリドキシン (MPN ビタミンB6類似物質) という物質によって引き起こされるのは、最近になって判ったことなのです

 このMPNという成分が、脳内で神経に働くビタミンB6の作用を妨げ、神経伝達物質の代謝を阻害するためにケイレンなどの中枢神経症状を起こすのではないかというメカニズムが解明されています。

 MPNは肝臓で解毒されますが、幼児には解毒酵素が少ないためこのような中毒症状につながるものと考えられています。

 10歳以下の子どもにはギンナンを食べさせない」 ことが大切で、少なくとも5粒以上は食べさせてはなりません

大人の人でも10粒くらいに留めておくのが無難といわれていますが、過敏な人はそれ以下でも下痢や吐き気、めまいなどの中毒症状をきたすことがあるようですから、要は食べ過ぎないようにすることです。




ギンナンによる ヒフかぶれ(接触性皮膚炎)


ヒフにできるぶつぶつは、小児科医泣かせの症状の一つです。

典型的な湿疹とか、感染症でもハシカや水痘(みずぼうそう)、手足口病、りんご病のように、臨床経過や皮疹に特徴のある場合は診断もつきやすいのですが、かぶれ(接触性皮膚炎など)や、虫さされを思わせるような発疹には悩まされることが少なくありません。

この季節に紅斑や紅い丘疹を訴えて受診された時には、ギンナンに触ったりしなかったかどうかを聴くするようにしています。

ギンナンはひどい皮膚かぶれを起こすことがあるからです。しかし、たとえ触れたとしても正直に認める子どもはそう多くはないことも頭に入れておく必要があります。

果肉が腐って軟らかくなったものほどかぶれやすいようで、私も何度も痛い目(カユイ目?)にあっています。

ギンナン皮膚炎は、果肉に大量に含まれるイチオールによって発症し、重症になると水疱ができたり、ギンナンに触った部位だけではなく全身性の発疹が幾日も続くこともあります。まるでウルシかぶれのようです。

こうなると、なまじっかな塗り薬や抗ヒスタミン剤の内服などでは追いつくものではなく、特殊な薬(副腎皮質ホルモン剤のような) の助けを借りる必要があります。

このような状態になった方は、お医者さんに相談されたほうが良いと思います。

ギンナンに限らず、はぜの木、ヤマウルシ、ヌルデ、イチジク、キクなどもかぶれを起こしやすい植物ですが、キウイフルーツやマンゴー、パイナップル、セロリ、シソの葉、大根、にんにく、など身の回りにあるごくありふれた食材に触ってもかぶれる人がないわけではありません。

 このような植物だけではなく、ピアスや、めがねのメタルフレーム、虫歯の充填材の金属、ゴム手袋、化粧品や化繊製品などで皮膚炎を起こすことも稀ではありません。

かぶれについてのこのような知識を知っておくことや、触らなくてすむものには触ったり近づいたりしないように心がけることが大切でしょう。

接触性皮膚炎には、その物質に触った刺激でできる直接的、一次的なものもありますが、アレルギー性接触性皮膚炎の形をとるものも多く、T型とW型(遅延型)の2種類が知られています。

もし、かぶれを起こしやすい木や草花に触った場合には、直ぐに流水でよく洗い、発赤や腫れに対する処置を受ける必要があります。

接触性皮膚炎がなかなか治りそうもない場合は、皮膚科を受診して、パッチテストという容疑物質をしみ込ませたパッチを皮膚に貼る検査を受け、白黒を確認してもらようにしましょう。


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