えっ 狂犬病?

 狂犬病にかかって亡くなられた男性の報道が話題になっています。

日本国内では36年ぶりの発病1116日に確認されたばかりですが、次いで21日には60歳代の男性が死亡したというものです。

1950年に「狂犬病予防法」が施行され、飼い犬の登録と狂犬病ワクチンの接種が義務づけられてから、1957年以降は「狂犬病」の発生はなかったのです。

海外で感染した日本人患者も70年が最後となっていますが、予防接種実施率は未登録犬も含めて4割以下と誠に心もとない状況です。

今回の二人の男性は、いずれもフィリピンで犬に咬まれて発病されたもので、世界では、今でも年間5万5千人もの人が狂犬病で死亡(04)、特に多いインドでは約3万人が命を落としているのだそうです。

狂犬病の撲滅に成功した国は、日本、イギリス、台湾、ニュージーランドなど島国が多く、わが国が周囲を海に囲まれていることは国防上の有利さばかりではありません。

狂犬病は、狂犬病ウイルス(rabies virus) を病因とし、犬だけではなく、コウモリ、猫、キツネをはじめヒトを含む全ての哺乳類が感染する「人獣共通感染症」で、ひとたび発病すれば死亡率はほぼ100で、治療法はないのです。

犬に咬まれてその傷口から侵入した狂犬病ウイルスは、神経に沿って脳神経組織に達し発病にいたることになりますが、咬傷が脳から離れているほど潜伏期間はそれだけ長くなります。

感染してから発病するまでの潜伏期間はおよそ1〜3ヶ月と言われていますが、中には10日前後で発病するケースも見られるようです。

子どもは体も小さく手足も短いので手を咬まれても成人よりは早く発病に到り、大人でも顔を咬まれた場合はそれだけ早く発病することになります。

海外で犬に咬まれたような場合、直ちに傷口を流水と石けんでよく洗い消毒液で消毒した上、ワクチン(組織培養ワクチン) を計6回接種することが必要です。

WHOでも推奨されている抗狂犬病免疫グロブリンという製剤の使用で発病阻止が期待されますが、わが国では承認されておらず、外国でも一部の地域を除いて入手は困難な場合が少なくないようです。

日本各地に入港するロシア船に乗せている犬が、検疫を受けずに上陸するケースが相次いで、狂犬病が国内に入ってくる恐れが強いとして「不法上陸犬対策要領」が作られましたが、ロシア船の6割ほどは犬を「守り神」として乗せているのだそうで、不法に上陸した犬の一部は逃げ出したりすることもあるようです。

ロシア船の入港が多い北海道や富山県など4箇所の港湾周辺では、0203年度に犬の狂犬病免疫保有実態調査が行われましたが、免疫を持たない犬の割合が6に達するという結果だったようです。

感染拡大を防ぐためには8割の免疫保有率が必要とされていますので、ワクチン接種率の向上などいっそうの対策強化が求められるところでしょう。

03年には、ペルーからボリビアに輸入されたハムスターが狂犬病にかかっていることが判明して、このハムスターに接触した可能性のある80人が緊急のワクチン接種を受けて事なきを得たという事件もありました。

狂犬病ウイルスの仲間である「リッサウイルス」の感染源となるアフリカ産コウモリ4がペットとして検疫なしに野放しで輸入されていた事実が分かって対応に苦慮した事例もありました。

04年ブラジルのアマゾン川流域では、吸血コウモリに咬まれた住民10数人が狂犬病に感染して死亡したということです。

いずれにしても、海外では犬やキツネなどの動物に咬まれない注意をすることが大切でしょう。

自宅で犬を飼っているような家庭では、子どもは警戒心が薄くなっているので自分の飼い犬と同じような感覚で犬の頭をなでたり接したりしがちですから注意が必要です。

狂犬病の多発地帯などへ海外旅行する場合には、ワクチンの事前接種を受けてから出かけるのが賢明かもしれませんが、そのあたりの対応は国によってまちまちです。

米国でも一般旅行者や長期滞在者については接種を勧めてはいないようです。


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