新型インフルエンザ と タミフル (抗インフルエンザ薬)

タミフルの不足は カトリーナのせい


新型インフルエンザの足音が日増しに近づいているように思われます。

11月11日、厚生労働省は新型インフルエンザの大流行に備えて行動計画を発表し、抗ウイルス薬の備蓄や、国内で大流行が起こった際の治療の優先順位、発生状況に応じた学校の休校、大規模集会の自粛勧告など必要な対応策を提示しました。

マスコミは、今にも新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミツク)が勃発するような報道をしていますが、徐々にその危険性が高まっていることだけは間違いないとしても、それがいつになるか、今シーズンなのか、来年の冬なのか、またその先かは誰にも分からないのです。

危険度を6段階に分けると、現在は下から3番目のフェイズ3の段階にあり、フェイズ6のパンデミックまでにはまだ余裕があるともいえるでしょう。

新型インフルエンザが登場するとしたら、それは高病原性鳥型インフルエンザ・H5N1型が人から人へとうつりやすいタイプに変身したものとなるでしょう。

現在使われているワクチンは新型には効果がなく、新型が流行し始めても、それに対して有効なワクチンが実際に使用できるようになるまでには最低6ヶ月はかかるものと予想されています。

厚労省は国立感染症研究所の業績をもとに、ベトナムのH5N1トリ型ウイルス株から遺伝子組み換え技術を用いる250万人分のワクチン製造計画を進めていますが、これとて抗原が変異して違ったウイルスが流行し始めでもしたら効き目は期待できない可能性を残しています。

従って、流行し始めてから数ヶ月間は、新しいワクチンは全く期待ができないことになります。

1918年から翌19年にかけて世界的な流行を起こしたスペインかぜの時には、わが国の流行は3波に分けて流行が繰り返し押し寄せてきたといいます。

流行が始まるともに的確なワクチン作りに向けて総力を挙げての取り組みがなされれば、流行の後半にはその恩恵にあずかることができるかもしれません。

このように流行初期はワクチンには期待ができないとなれば、頼れるのは抗インフルエンザ薬しかないことになります。

抗インフルエンザ薬「タミフル」は、スイスのロッシュ社で唯一生産されていますが、世界各国は「タミフル」の備蓄に奔走し始めており、極端な品不足が懸念されています。

そのため生産能力を04年の10倍にあたる年産3億錠に増強するとともに、他企業に製造ライセンスを供与して世界的な増産を図ることによって、鳥インフルエンザの世界的流行に備えようとしています。

昨年まで、米国にはタミフルを備蓄して新型インフルエンザに備えるという発想はありませんでした。米国はどちらかというとワクチンによって国民を護るという戦略を重視してきたのです。

ところが、ニューオルリーンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」の対応を誤って失点を重ねたブッシュ大統領は、新型インフルエンザ対策で名誉挽回を目論んでタミフルの国家的備蓄という挙に出たのです。米国は4千4百万人分(EUは1億1千万人分)の備蓄計画や、ワクチンや抗ウイルス剤の開発・備蓄に71億ドル(約8千3百億円)を投じる国家戦略を発表しています。

このためにタミフルの品不足懸念に拍車がかかり、各国が取り合うという構図が出来上がってしまったようです。

昨シーズンには、このタミフルの実に74%が日本だけで消費されたといわれています。比較的高価なこの薬が、国民全体で分けへだてなく使用されたというのはわが国の優れた社会保険制度「国民皆保険」のお陰であるともいえるでしょう。

最近の鳥型インフルエンザの流行状況を新聞報道でみると、11月6日、中国・湖南省で肺炎にかかった男女3人が、鳥インフルエンザに感染した可能性があるという見解が明らかにされ、さらにまた、湖南省や遼寧省をはじめ4ヶ所で相次いで家禽の大量死が報告されています。

インドネシアでは、8日にジャカルタで死亡した16歳の女性が鳥インフルエンザに感染していたことが確認されています。これでインドネシアでの死者は6人、感染者は10人になりました。

イタリアでも野生のカモからH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが発見され、EU域内では、ギリシャ、イギリスについて3番目となりました。

欧州では10月にルーマニア、トルコ、でも鳥インフルエンザが確認されたことから、この欧州上陸を受けて、10月18日にはルクセンブルクでEUの緊急外相理事会を開き、抗インフルエンザ剤の備蓄をはじめ総合的な感染対策で合意をみています。


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